契約企業の概要

外資系の日用品の製造販売企業。全国に販売店があり、PRIDE指標は取得していないがダイバーシティ&インクルージョンの取り組みは積極的に行っており、LGBTに関してもイベントに協賛・出展するなど取り組みを進めている。

具体的には採用ポリシーの中で性別による差別禁止を定め、社員に対しての啓発活動として各種LGBT研修やLGBTに関する情報発信、LGBT相談窓口の設置をし、また当事者のコミュニティ活動もサポートしている。

相談内容

最初にいただいた相談のメールは次の一行だけでした。

『Xジェンダーってわかってもらえますか?』

これまでもXジェンダーの方からの相談は度々あるのですが、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーと違ってそこまで認知度も高くなく、なかなか理解してもらえないという声をよく耳にします。まずは、どういう相談なのかもう少し話をしてもらえるように、時間をかけてメールでやり取りをしていきました。

『私はアルバイトとして2年、その後正社員登用してもらい、正社員として約2年働いています。アルバイトのときは店舗でも働いていましたが、今は工場の方で働いています。工場での仕事は仕事内容も給与面も特に不満はないのですが、人間関係でちょっと疲れてしまいました。』

『セクシュアリティに関しては、戸籍は女性なのですが、自分では女性ではない、という想いがあります。男性か?と聞かれるとそうとも断言はできないのですが、とりあえず女性ではないというのだけは思っています。男性になりたいというわけではないので、性同一性障害の診断はとっていないですし、何も治療はしていないです。』

『職場では工場なので制服を着ています。制服は男女の区別がほぼないのですが、トイレは男性用に入るわけにもいかないので、多目的トイレか女性用トイレを使っています。周りの同僚は正社員もいるのですがパート社員が多くなります。みんな良い人たちなのかもしれないですが、いわゆるガールズトークみたいなのが多くて疲れちゃいました。『職場の男性の中で誰が一番いい?』『結婚はいつまでにしたい?』とか“ちゃん付け”で呼ばれたりとか。一つ一つはたいしたことではないのですが、毎日となるとストレスになります。』

『私は見た目はややボーイッシュな女性にみられていると思います。ちゃんとカミングアウトをすればそういう話も少なくなるのかもしれません。実際にうちの会社では、カミングアウトをして働いている当事者もいるみたいですが、このような周りの雰囲気を見ているととてもカミングアウトをすることはできません。』

とのことでした。

弊社の外部相談窓口対応

相談者といろいろ話をしてみると、相談者は、何かを相談して改善したいというよりも退職も含めて考えているところでした。企業の人事部ダイバーシティ担当者に状況を共有したところ、この企業としては、LGBT取り組みもかなり進めているのもあり、人事部のダイバーシティ担当者としては、直接相談者と話をしたいとのことでした。

相談者にも確認したところダイバーシティ担当者にカミングアウトをするのは問題ないとのことなので、相談者とダイバーシティ担当者の面談の場を設けました。

LGBTフレンドリー企業としての対応

企業としては、職場内の理解をより深めるために、eラーニングのコンテンツの拡充をしました。これまではLGBTの基礎知識がメインでしたが、さらにXジェンダーについても知識編に加え、またeラーニングの範囲を正社員だけでなく、パート社員にも広げることにしました。

その後、相談者とお話をしてみたところ、すぐに職場環境が変わるわけではないかもしれないけれど、企業としていろいろ取り組みをするとのことで、もう少し頑張って働こうと思うとのことでした。

ただ、相談者としてはダイバーシティ担当者と話をしてみて、自分は“結婚話”など自体が嫌なのではなく、女性として扱われることがイヤ、という自分の想いがちゃんと伝わったか少し不安とのことでした。