LGBTは就労するうえでさまざまな難しさがあります。トランスジェンダーやXジェンダーは働くうえで目に見える要望があることが多いので、周囲もトランスジェンダーがもつ難しさもわかりやすいことが多いです。

一方で同性愛という意味では同じなのですが、ゲイとレズビアンでは職場における悩みはかなり異なる部分もあります。

今回ご紹介するKさんは、上場企業で正社員として働く20代のレズビアンの方です。どんなことに悩んでいるのでしょうか?

私は、大学卒業して入社して5年目になります。メーカーで広報の仕事をしています。今、女性のパートナーと一緒に暮らしているのですが、そのパートナーも実は同じ会社で働いています。部署は違いますが、場所は同じです。

知り合ったのは、別のレズビアンの紹介でした。最初にあったときは同じ会社だとは知らず、話していて偶然に気が付きました。

職場では、違う部署でもよく顔をあわせます。私の会社はLGBTの取り組みもしていてPRIDE指標も受賞しています。ただ私たちは職場では一切カミングアウトをしていません。職場にはパートナーシップ制度もあるのですが、それも活用していません。

なぜ、カミングアウトをしていないかと言えば、やっぱりちょっと怖さがあります。LGBTに差別はしない!と聞きますが、会社としてはそういう方針であっても、職場にはいろいろ思う人もいるだろうし、差別はなくても、嫌な思いをすることもあるかもしれないのでわざわざ言う必要がないと思っています。

特に二人とも同じ会社にいるので、もしカミングアウトをした場合に、どちらか一人でも嫌な思いをすると結果的に二人とも働きづらくなる可能性があるのでリスクが大きいと思っています。

今、一番心配しているのは、もうじき30歳になるのですが、今後どうやって働いていこうかということです。私たちは女性同士なので二人の収入で稼いでいかなければいけないですし、だからこそ私がしっかりキャリアアップしていきたいと思っています。そのためにはこのまま今の会社で働いていければそれが一番いいとは思うのですが、同期の中でも男性が先に昇進していくのを見ると、女性が長期的にキャリアアップしていくのはやはりまだ難しさがあるのが実態だと感じています。定期的に上司とのキャリア面談もありますが、このようなことは相談できないですね。

転職も考えなくはないですが、転職して待遇をあげるのは今の会社でキャリアアップすること以上に厳しいかなと思ってなかなか具体的な転職活動までは進んでいないです。

同じ会社で働くゲイやレズビアンカップルというのもたまにお会いすることがあります。同じ会社の場合は、何かあった場合には自分だけでなくパートナーも巻き込む恐れがあるので、カミングアウトにはより慎重になる人が多いです。また同じ会社だからより理解できて支え合える部分があるので、周りにカミングアウトをしなくても大丈夫!という方もいらっしゃいます。

レズビアンの転職に関しては、ゲイの転職より条件面での選択肢が少ないのが現実です。そのため、ゲイの転職ではセクシュアリティをカミングアウトして働けるフレンドリーな職場で働きたい、というような希望をもつ人も多いですが、レズビアンの転職希望者の場合には、LGBTフレンドリーかどうかというより、まずは収入やキャリアアップができるかという点で引っかかりやすいという課題があります。これはもともと女性活躍という話と密接に絡んでくるのですが、レズビアンの場合はその影響を直接的に受けてしまうことがあるのです。