『ぼくは性別モラトリアム』。

LGBTの中でもXジェンダーや性自認について、かなりわかりやすい漫画だと思います。かなりお勧めです。

先日、お話をしていたXジェンダーの方から、『自分の感覚にとても似ている本が出たので、是非読んでみてください!』と推薦されたのが本書です。トランスジェンダーに比べるとXジェンダーの言葉の認知度合いは低いですが、いろんな人と話をしているとLGBTの中でもXジェンダーの人が一番多いのではないかとも感じています。

イラストレーターの「からたちはじめ」さんが、自分の性別に違和感を持ち、自分がどう生きたいのかを考え始め、その悩んでいる過程を漫画にしたのが本書です。Xジェンダー(特にFTX)の人には“あるある”という感覚を持つ人も多いようです。

Xジェンダーにとっては、自分自身の性自認を考える材料になると思います。同時に男女二元論ではないXジェンダーという存在は分かりにくいという人にとっても、Xジェンダーを少しでも分かるきっかけになる漫画です。30分程度で読めるので読みやすいですし、性自認ということを改めて考えることができるので、オススメのLGBT関連漫画です。

書籍概要

女性であることに違和感を持ち「男になりたいんだ!」と思い込んでいた。でもよく考えてみたら、手術をして性別を変えたいわけじゃないし、男性として彼女が欲しいわけでもない・・・。あれ?ぼくはLGBTなの?それとも?自分はいったい何者なのか?悩み考えた道のりを描いた実録漫画。

印象的なシーン

第一章 男になりたい!

今の現状、手術をしていない胸のこと、自分の名前、服装、薄手の苦労、化粧への感覚、違和感があるという感覚、など普段、著者が感じていることが漫画で描かれています。このような体験や感覚はXジェンダーの人がよく感じるもののようです。

『今まで色々考えてきてひとつ気づいたのは、自分は名称のあるどこかのコミュニティに属そうと必死になっているのではないかということです』(P76)

著者は“名札が欲しい”と表現しています。LGBTはアイデンティティの話ということがしばしばいわれますが、まさに自分が何者なのか?どんな名札がつけられるのかを知りたい、属したいという欲求です。著者の場合は、名札探しをし続けていくうちに、すでに大切な名札をもっていることに気づき、少し気持ちが楽になります。

『自分が女性であることの何を嫌悪しているのだろう。一つは女の子だからと女性の役割を押し付けられること』(P98)

性別移行まで望まないトランスジェンダーやXジェンダーの中には、このようなジェンダー役割に対して反発・嫌悪を覚える人も多くいます。ジェンダー役割なので国や時代によって変わってはきます。今の日本は以前に比べれば男女の役割差は減ってはきているとは思いますが、それでもたくさんの差があるのも事実です。

感じたこと

この漫画は、著者の気持ちの揺れや悩みが手に取るように伝わってきます。第1章の『男になりたい!』が第3章では『男になりたい、わけではない・・・?』となります。

あとがきにも書かれていますが、性自認というのは非常に繊細で自分でも捉えにくいものなんだと思います。

またこの漫画では『カミングアウト』という言葉はあえてでてきません。著者にとってはセクシュアリティというのは、“左利き”と同じで、なんてことのない特徴や個性の一つ、その程度のことだと思っているとのことです。『カミングアウト』というと意を決して…というイメージがあるかもしれませんが、雑談やふとした瞬間にぽろっと出てくるもの、という人もいます。

LGBTの中でもXジェンダーや性自認について、かなりわかりやすい漫画だと思います。かなりお勧めです。