LGBT当事者からの要望を背景に、さまざまなLGBT取り組みを進める企業が増えております。トランスジェンダー(Xジェンダー)からの要望として男女差をできるだけなくしてほしいという要望も多くあります。

今回は、LGBT取り組みを積極的に進めている企業に入社した新卒1年目のIさんの実体験の話をお聞きしました。

私は、2020年3月に大学を卒業して、小売企業に入社しました。私は戸籍は男性ですが、自認性は女性で、女性として働きたいと思って、就活時にもMTFトランスジェンダー(性同一性障害)というのを人事にはカミングアウトしていました。

まだホルモン治療を始めたばかりというのもあり、外見的には女性に見えない場合もある気はします。ただできれば職場ではカミングアウトをせずに女性として働きたいと思っていました。

トランスジェンダーということをカミングアウトして、ひどい言葉を言われた先輩の話なども聞いていたので、最初は面接はちょっと不安がありましたが、私自身は面接などで直接ひどい言葉を言われたことはありませんでした。

ただ、選考を落ちた企業は、はっきり言われていないですがセクシュアリティが原因だったものもあるかもしれないとは感じています。

それ自体は差別の一つかもしれないですが、実際に働く私の立場からすると、会社的に難しいのであれば、無理せず、難しいと言って落としてもらったほうが良いと思っていました。

なかなか内定がもらえない中で、ある企業から内定をもらいました。LGBTフレンドリーをHPなどで発信しており、実際にカミングアウトをして働いているトランスジェンダーも何人かおり、面接時にもトランスジェンダーの働き方についていろいろ相談ができ、安心して入社することができました。

実際に入社して、まずは店舗の販売職から仕事はスタートしています。店舗では店長にだけMTFトランスジェンダーであることをカミングアウトをして、それ以外の人にはいっていません。更衣室は個室があり、トイレも誰でもトイレがあるので問題ありません。

勤務時は制服ですが、今年から男女共用の制服になりました(ボタンと形がやや違うだけ)。これは社内で別のトランスジェンダーの方の声を尊重して、制服のデザイン見直しのタイミングで変更したと聞いていました。確かに男女差がなく、いい面もあります。一方で私に対して店舗のパートの方から『〇〇さんって女性なの??』っていう質問?噂?がでているというのを耳にしました。

私の見た目の問題が大きいとは思っていますが、青とピンクみたいに男女ではっきり制服が違えば、女性用の制服を着ることが一つのアイコンとなって、周囲からは女性に見られやすいのではないかとも思います。

入社前に制服の話は聞いていたので気づかなかった点は私も悪いと思うし、結局は自分自身のパス度を上げていくしかないのかもしれませんが、制服も男女別のものも残しておいてもらえればよかったのにと思います。

社内のダイバーシティ部の人にはいちおう相談しましたが、制服を変更したばかりだからすぐの対応は難しいと言われました。

社内にカミングアウトをしているトランスジェンダーの人はなかなかいないのと思うので、仕方ないのですが、トランスジェンダーでもいろんな希望の人がいて、働きやすさも違うというのは知ってほしいなと思いました。

Iさんのように、新卒で初めて正社員として働く場合には、実際に働いてみないとどんな働きにくさがあるかイメージがつかないというケースもあります。そのため入社時に希望や働き方をすり合わせても、後から『やっぱり違った』ということもあるので都度、相談していけることが大切です。

またIさん自身が話していたとおり、トランスジェンダーといってもいろんな人がいて、働きやすさは違うので、できるだけ多くのケースを把握したうえで対応を検討していくことも大切です。