契約企業の概要

全国展開している飲食チェーン。ショッピングモールや路面などに店舗展開をしており、社員の平均年齢も20代と若く、アルバイトが多いのも特徴。ダイバーシティ&インクルージョンの一環としてLGBTに関しても研修やeラーニングを実施している。アルバイトも含めて社内でカミングアウトをして働いているトランスジェンダー社員も複数名いることから、LGBT専用の相談窓口を社内と外部の両方に設置をしている。

相談内容

当社への相談は、社内相談窓口の担当者からいただきました。ダイバーシティ推進担当の方が他の業務と兼務でLGBT専用の社内相談窓口の担当もしています。こちらに相談者からメールで相談がありました。

社内相談窓口の担当者いわく、相談者はトランスジェンダー(FTM)で男性用の服装を希望しているけれど、それ以外の希望がよくわからない&匿名希望なので具体的な対応が難しいとのことでした。

そこで社内相談窓口を通じて、相談者の方から直接、当社の外部相談窓口に連絡をもらえるようにしました。

最初何度かメールでやり取りをしたあと、電話で直接お話をしました。相談者(Sさん)は21歳の戸籍女性の方です。入社して3年目で、現在は店頭で接客販売職をしています。Sさんは自分の性自認に迷っており、本人の中ではQ(クエスチョニング)という自認とのことでした。社内の窓口にも最初は迷っているという感じも伝えたけれど、わかりにくそうだったのでトランスジェンダーと伝えたそうです。

Sさんの感覚としては、女性半分、男性半分という感じで、どちらの考え方もわかるところがあるそうです。現時点は、男性という自認は全くなく、ホルモン治療なども含めて一切の治療の予定はないそうです。

実際に仕事をする上でどのような悩みやご希望があるのかを確認したところ、Sさんとしては男性っぽい服装や髪型(ベリーショート)とノーメイクを希望とのことでした。ただしトイレや更衣室も女性用を使いたいとのことです(Sさんには男性用を使うという選択肢はない)。

ベリーショートで、ノーメイクの自分が女性用トイレを使うと周囲が混乱するなら、男性用を使うべきなのかもしれないとも思うけれど、それも違う気がするのでどうしたらいいでしょうか?というご相談でした。

弊社の外部相談窓口対応

Sさんの場合、仕事上は制服があり、男女ほぼ共通のものでした(ボタンの位置など多少異なる)。またショッピングモール内に店舗があるので、トイレと更衣室はモールに入っている他のショップのかたと共同で使用しています。

企業に確認したところ、男性用の制服を着ることは問題ないし、髪形やメイクも接客業として不適切でなければOKとのことでした。

問題になるとしたらトイレと更衣室でした。戸籍が女性で性自認も男性でない人が、男性用のトイレや更衣室を使用するというのは、基本的にありません。ただ見た目にギャップがあった場合には周囲の人の理解や反応を考慮することが必要になる場合があります。

仕事上で男性用の制服を着るためにも、一度、具体的な対応を相談するということで、社内相談窓口の担当者と、弊社の担当者、そしてSさんで直接、面談を実施いたしました。

Sさんの外見はかなりボーイッシュな感じでしたが、身長が160cmというのもあり、そのまま女性用更衣室とトイレを使用しても問題ないというのが企業の判断でした。

 

今回のご相談は、企業がLGBTブレンドリーであったことから結果としては相談者も自分の希望のスタイルで働けるようになりました。ただ性自認と性表現の希望が一致していないケースであったため、社内の相談窓口に相談した際に、うまく希望が伝えられなかった部分もありました。

性別移行したいトランスジェンダーの場合は、性自認と性表現が一致するケースも多くありますが、それでも一致しない場合もあります。パターン化することも大切ですが、同時に目の前の人にフラットに応対することも大切になります。