2020年もLGBTに関する出来事やニュースがたくさんありました。いろいろあった中で、特に大きな出来事をピックアップして、2020年を振り返ります。

国/自治体編

地方自治体のパートナーシップ制度は2015年に渋谷区と世田谷区でスタートしました。毎年導入する自治体は増加し、2020年末には66自治体で、カバー人口は3,000万人を超えています。2019年末と比較して2020年には新たに35の自治体でスタートするなど、急拡大していることがはっきりとわかります。横浜市、大阪市、札幌市など政令指定都市でも多く導入されているだけでなく、大阪府や茨城県のような都道府県でも導入が始まっています。

国の動きとして、もっとも大きなものは、パワハラ防止対策関連法(労働施策総合推進法)が2020年6月に施行されたことがあげられます。これにはLGBTに関するハラスメント(SOGIハラ)が含まれることが明記されました。パワハラ防止法では、①SOGI(性的指向/性自認)に関して侮辱的発言をすることと、②他人のSOGI(性的指向/性自認)を暴露することが、禁止されております。

この法律施行をきっかけとして、LGBT取り組みを始める企業も増えてきています。
詳細はこちら↓をご参照ください。

2020年6月施行。企業に求められるSOGIハラ対策。パワハラ防止法関連

社会の動き

2020年11月には、「一橋大学アウティング事件」の裁判に関して、東京高裁の判決がでました。大学側の安全配慮義務を怠ったとは言えないという一審の判決を支持し、遺族の控訴を棄却しました。損害賠償が認められなかったという点を考えると遺族側の敗訴といえるかと思います。一方で、裁判長はアウティングという行為については「人格権ないしプライバシー権などを著しく侵害するものであって、許されない行為であることは明らか」と明言しました。

この裁判は、2015年8月に起きた一橋大学ロースクールの学生が、キャンパス内の建物から転落して死亡に至ったことが発端でした。この学生はゲイであることを同級生にLINEグループで暴露されたことがきっかけで心身に不調をきたした末の出来事でした。この事件をきっかけに「アウティング」という概念や言葉が急速に社会的に広まり、国立市のアウティング禁止条例の制定や、パワハラ防止法にアウティング禁止が盛り込まれるという動きにつながっています。

また映画やドラマに関しては、『おっさんずラブ』がヒットした2019年に続き、2020年にもLGBTに関連した映画、ドラマなども多く発表されました。
『総務部長はトランスジェンダー』・・・総務部長の岡部鈴さんの実体験を基にしたドラマです。ムロツヨシさんが主役でNHKで3月に放送されました。
『ミッドナイトスワン』・・・母と娘の愛の形をテーマに、草彅剛さんがMTFトランスジェンダーを熱演した映画です。9月に全国で公開されヒットしました。

映画やドラマなど、賛否両論もありますが、多くの人の関心をひき、これまでLGBTと遠かったという人にも、LGBTを意識する&考えるきっかけとなっているかと思います。

企業編

企業のLGBT取り組みに関しても、確実にかつ急速に増えてきています。2020年はコロナの影響でLGBTに関するオフラインイベントもほとんど中止またはオンライン開催になりました。そのため企業のイベント出展なども見えにくい状況でしたが、当社へのお問い合わせ数やPRIDE指標の応募企業数などをみても、取り組み企業は増加していると言えます。

PRIDE指標を受賞しているような企業でいうと、一通りの制度を整え、その先として風土醸成に取り組んでいる企業が増えています。

一方で、上場企業でもLGBT取り組みを2020年にスタートした、あるいはこれからスタートするという企業も数多くあります。その多くがCSRや同業他社を意識して始めていますが、既存社員や就職活動の求職者からのカミングアウトをきっかけとしているケースも多くあります。

 

2021年はどんな一年になるのでしょうか?

LGBTに関しては、引き続き社会の関心は高くなるでしょう。法的な整備もさらに進むかもしれません。不適切発言なども含めて、LGBTについての情報に触れる機会が増えることが、社会の理解を促進することにつながり、社会の理解の浸透にあわせて企業への期待と責任が高まっていくことになります。

2021年は多様な価値観や生き方が肯定される(否定されない)、そんな社会や企業がより増えていく一年になるのではないかなぁと考えています。