LGBT取り組みを進めているフレンドリーな会社であっても、職場では全員に理解があるわけではないので、働きにくさを感じるLGBTの当事者は少なくありません。

今回、お話をお聞きしたMさん(ゲイ)は、そんな職場でモヤモヤを抱えていた中で、新型コロナウィルスの拡大に伴い、転職まで考えるようになったとのことです。

コロナに関しては、多くの人が、仕事においてさまざまな影響を受けていますが、その中でゲイというセクシュアリティに関連してコロナの影響を感じているという事例をご紹介します。

私は、32歳で保険会社の人事部で働いています。6年前に中途で入社して以来、人事部一筋です。保険会社は比較的、LGBTQの取り組みが進んでいる企業が多くて、弊社も数年前から、研修をしたりeラーニングをしたりして社内でも勉強を進めています。またお客様向けのサービスでも同性パートナー向けのサービスを提供するなど、会社全体としてはLGBTフレンドリーなほうだと思います。

ただ実際に働いているとやはり、職場ではいろんな人がいます。私はゲイなのですが、入社当初は、飲み会の席上では「彼女いないの?」というのはよく聞かれました。実際付き合っている人がいなかったので、そのまま「いない」、と答えると、合コンやキャバクラとかの誘いも多くて困りました。そのため、「いる」と答えるように変えたら、今度は「どんな彼女なの?」「夏休みはどこかいくの?」「写真見せて」というような話もあって、どちらもかわすのがちょっと厄介でした。

同僚のみなさんも基本的に良い人が多いですし、いわゆる悪気があるわけではないので、ちょっと厄介という程度で、親しくコミュニケーションは取っています。

ただ、このような環境では、会社としていくら取り組みをしていても、職場でカミングアウトをするというのは、あまり考えられないです。あからさまの差別はないと思いますが、好奇の目はありそうな気もします。

仕事自体は採用がメイン業務ですが、とても面白くやりがいを感じています。もっと経験を積んでスキルアップをしたいと考えていました。

ところが昨年からの新型コロナウィルスによって状況が変わりました。実は、私自身は今は、同性のパートナーがいて、一緒に暮らしているのですが、これに関しては会社には何も言っていないので、難しくなっている面があります。

コロナによって、採用業務も含めてオンラインやテレワークが増えていて、自宅からオンライン会議などもします。パートナーが家にいるときにオンライン会議をする場合には、うまくやりくりしてパートナーの存在を隠すようにしています。問題は、コロナ対策です。同居の家族が感染もしくは濃厚接触者になった場合には、会社に届け出なければいけないという社内通達があります。

それは確かに、感染拡大防止のためには当然、必要な措置だとは思います。一方で自分自身のことを考えると、同性パートナーの存在が言えていないので、パートナーが感染した場合に、会社にどう報告をすべきか迷っています。自分も感染するリスクもあるし、黙っているわけにもいかないですが、カミングアウトもできないので、答えが出ない状況です。

そんなことなら、カミングアウトを働ける職場に転職するのもありかなと、ちょっと考えています。

Mさんが勤務している会社は、会社としてはLGBT取り組みを少しずつ進めていますし、おそらく人事部の上司はたぶん、カミングアウトをしても変な感じにはならないだろうと、Mさん自身もおっしゃっています。しかし、社内で実際にカミングアウトをして働いている人もほとんどおらず、社内でのこれまでの同僚とのやり取りとか考えるとやはり心配があるとのことです。仕事自体はとても面白くやりがいがあるとのことなので、セクシュアリティに関して社内で、もっと相談しやすいと解決できる課題もあるのかと思います。