週刊日経ビジネスでの2021年8月23日号で、「あなたの隣のエンダー革命」が特集として取り上げられています。この特集では、女性の貧困や自殺の問題、LGBTQ+の働き方や同性婚の問題、家族制度や役割などについて、価値観という視点からさまざまな問題提起を行っています。2021年の“今”どう考えるべきかを訴えています。

日経ビジネスに関しては、実は2015年8月24日号で、「究極のダイバーシティ LGBT あなたの会社も無視できない」という22ページのわたる特集を組んでいます。2015年は日本で自治体の同性パートナシップ制度がスタートし、同時にアメリカで同性婚が合法化されるなど、エポックメーキングな年になりますが、当時はまだビジネス誌にLGBTが取り上げられることはほぼなかったので、非常にインパクトのある記事でした。

今回は、6年前のこの記事にどんなことが書かれていたのか?6年後の今、読んでみて何が変わって、何が変わっていないのか?という点からご紹介します。

特集概要

特集の見出しです。

  • あなたが知らない2つの現実
  • LGBTの基礎知識
  • 1000万人の苦悩 放置すれば問題企業
  • LGBT覆面座談会
  • 寄り添えば新市場が広がる

印象的なコンテンツ

「『ビジネスの観点で言えば、ダイバーシティーは競争力であり文化そのもの』と言いきっているのはGEの会長イメルト氏。消費者相手ではなく産業分野の企業までもがLGBT支援を経営テーマの一つに位置付け始めている」

日本でもLGBT取り組みは進みつつありますが、やはり消費者向けの企業が中心となっている印象です。またLGBT取り組みをすすめる目的として、ダイバーシティが競争力そのものと経営トップが信念をもって進めている事例は全体でみれば非常に少ないというのが現状です。

「上司や同僚の反応は3種類、絶句、爆笑、受け流す」「男性だから、女性だから、それでくくらないでほしい」「自由な服装、接客無、それが仕事選びの条件」

LGBT覆面座談会の中での発言です。LGBTという言葉の浸透やパワハラ防止法の施行もありあからさまにセクシュアリティを否定する発言を企業から言われる場面は減ってはいます。しかし企業に就職する、働くうえでLGBT当事者の悩みは6年前と今でも大きくは変わりません。

「企業に必要な3段階の行動。STEP1“LGBTについての知識を持つ”⇒STEP2“制度や慣習を変える”⇒STEP3“理解者をふやす”」

LGBTについて適切な知識を持とうという動きは6年前と比較すると急速に進んでいます。上場企業であれば、LGBT研修をしている、またはやらなければならないという認識を持っている企業が大半だと思います。その中には制度をつくっている企業も少しずつ増えてきているとい状況です。

感じたこと

この6年前の記事は、読者の多くがLGBTという言葉を聞いたことがない、という前提で書かれています。また企業の事例としては、外資系企業の事例が中心となっています。

その点では、今の日本では、LGBTという言葉の認知率も8割以上となり、パートナーシップ制度導入している自治体も急速にすすみ、テレビドラマや映画、ニュースでもLGBTが取り上げられることも多くなり、LGBTに関する社会課題が可視化されたという点が大きな前進だと思います。

企業という視点では、日本企業でも取り組み先進企業はこのような外資系企業をキャッチアップしてきていると感じます。ただ取り組みをしている企業はまだまだ数が少ないので、このすそ野が広がっていくことが社会の理解促進に寄与し、当事者の働きやすさにつながると思います。

また制度面だけでなく風土面での理解を深めていくことは時間がかかることなので、6年という短いスパンで効果を測定するのではなくより長い目線で、地道な活動をしていくことが求められています。

改めて6年間を振り返ると、LGBTを取り巻く社会の理解度合いは急速に変化してきています。この変化に一人ひとりが目を向けることがもっとも大切なのかもしれません。