契約企業の概要

化学業界の外資系メーカーのS社では、外資系企業ということもあり、LGBT取り組みを積極的に進めています。パートナーシップ制度などの制度面の整備はもちろん、管理職向けの定期研修や、全社員向けのeラーニングを毎年、実施し、またLGBT啓発月間の設定なども行っており、LGBTフレンドリー企業と言える企業です。

相談内容

「転職も考えているので、話を聞いてもらえませんか?」という相談がAさんから届きました。
いろいろ悩まれている様子だったので、直接、お会いしてお話をお伺いしようかと思いましたが、ご本人の希望でまずは電話でお話をすることにいたしました。

それによると、Aさんは現在の会社で、もう20年近く働いている40代の方で、戸籍は男性ですが、現在は女性という性自認をお持ちのMTFトランスジェンダーの方でした。現在の職場では、もともと営業職として働いており、また最近は新卒採用業務も並行して行っているそうです。
Aさんによると、入社時は性自認が明確に女性というわけではなく、自分でももやもやしていた状態だったそうです。それもあり、ずっと会社では男性として働いてきたものの、ここ数年は、やはり自分は女性として生きたい、という想いが強くなってきたそうです。1年前からホルモン治療を始めて、少しずつ体も変化してきているけれど、まだ周りに気付かれるほどではないとのことでした。このような状態で今後も、この職場で働くのが良いのか、それとも転職をして女性として再スタートを切ったほうがいいのかを悩んでいるとのことでした。

弊社の外部相談窓口対応

S社は、LGBT取り組みも進んでいるので、上司や人事部へ相談できないかをAさんにお尋ねしたところ、それは難しいとのことでした。

Aさんから見ても、会社ではいろいろなLGBTの取り組みがあり、研修などもよくやっているので、日常の中で差別的な発言はほぼないそうです。またカミングアウトをして働いている社員もAさんが知っているだけで10人以上おり、社内にコミュニティもあるそうです。ただその中にトランスジェンダーはいないそうです。

Aさんは、採用業務に携わっている関係で人事部との繋がりもあるのですが、話しているとゲイやレズビアンなどの性的指向のかたがオープンにしてカミングアウトをして働いているからこそ、トランスジェンダーです、というのが言いにくいと感じているようでした。Aさんとしては、女性として働きたいという気持ちと、そもそも女性として働けるのか?という不安があり、在職中の企業でトランスをした事例や、そもそもトランス女性として働くことの具体的な問題などを知りたいとのご希望があったので、さまざま事例をお話させていただきました。

何度かお話をさせていただく中で、セクシュアリティ面を除いた部分での転職の難しさの問題もあり、また女性として働くことを具体的にイメージしたときに転職よりも今の会社で実現する方法もあり得る、ということで、Aさんの中でも判断がつかず、もう少し考えてみたいという着地になりました。

個人名を明かしたうえでの人事部への相談も、現時点ではまだできないということでした。

LGBTフレンドリー企業としての対応

Aさんの同意をいただいたうえで、個人名を明かさず相談内容だけを企業にはお伝えしました。S社のダイバーシティ担当者は、社内でもゲイやレズビアンのかたがオープンにして働いているので、カミングアウトしにくさというのをあまり感じていなかったようでした。今回のご相談をお伝えしたところ、Aさんへの直接の対応はすぐには難しいのですが、改めてカミングアウトがなくても、トランスジェンダー社員もいるということを意識して、トランスジェンダーに関連する情報発信や啓発活動にも注力をしていくということになりました。

性別移行をしながら仕事をどうしていくかは、いくつかの選択肢があり、同時にその選択肢がどこにつながるのかご本人もわからないことが多いです。今回のご相談では、Aさんの悩みが解決をしたわけではありませんが、考える時間を必要とするケースも多いです。企業としては、フレンドリー企業としてダイバーシティ全般的な取り組みを進めつつも、その中で漏れてしまうケースもありえるので、さまざまな声をきけるようにしておくことはとても大切だと感じました。

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