性的マイノリティの中には、L、G、B、Tといったセクシュアリティのほかにもいろんなセクシュアリティの人がいます。その中には誰にも恋愛感情も性的感情も抱かないという人がいてアセクシュアル・アロマンティックと呼ばれています。

つい先日まで、NHKでもアセクシュアル・アロマンティックをテーマにしたドラマが放送されていたので、見たかたもいるのではないでしょうか?

今回は、アセクシュアルという自認のKさん(戸籍女性)の体験談をご紹介します。

私は、介護の専門学校を卒業して、いまも介護業界で働いています。今年で29歳です。今の職場も7年になり現場を任されています。仕事は利用者様の笑顔を見ると嬉しくなりますし、「ありがとう」という言葉をもらうと頑張ろう!という気持ちにもなります。

一方で、ちょっと困るのが「いい人いないの?」とよく聞かれることです。同僚の職員から言われることもありますし、利用者様からも本当によく言われます。

私自身は、今はアセクシュアルという自認をしています。性別は戸籍の通り女性という自認でそこは自分でも確信があります。ただ性的指向という部分は自分でもあまりよくわからないです。「男性は異性」という感じはあります。話をしていて面白い人とかは好きだと思いますが、たぶん、ほかの人がいう好きとは違うんだと思います。

これまでも男性から告白されて、付き合ってみたことはあるのですが、恋愛ドラマにあるような「ずっと一緒にいたい」「自分だけを見ていてほしい」みたいな感覚は全然わかりません。だから私は「逆恋愛体質」なのか、とか思っていました。最近、LGBTの話題を聞くようになった中で、自分でいろいろ調べていたら、アセクシュアルの人の言っていることが自分の中でピタリとくるものがあったので、今はアセクシュアルに該当するのかなと思っています。

自分もLGBTかもしれないと思ってから、意識して他のセクシュアルマイノリティの人の話を聞くようにしてみたのですが、レズビアンとかバイセクシュアルの話を聞いても、私とは違うという感覚しかありません。私からすると同性愛も両性愛も異性愛も全部同じグループで、マジョリティ側ですね。なので私は性的マイノリティなのかもしれませんが、LGBTの気持ちもよくわからないし、共感とかもあまりないです。

自分のこういうセクシュアリティについては特に隠してはいません。ただ誰も好きにならないと“カミングアウト”をしてもほとんどの人は真剣に受け取ってくれないですね。「いい人に出会ってないから」みたいなことを言われることはやっぱり多いです。そこは説明しても伝わらなさそうだし、一生懸命説明するようなことでもないかなと思うので、あまり気にしないようにしています。

仕事の中で、いろいろ聞かれることだけが面倒ですが、これはこの職場だけの問題ではないだろうから諦めているという感じですね。

2020年に実施された、電通の調査によると。アセクシュアル・アロマンティックの人口比率は0.8%程度で、同調査でトランスジェンダーと回答した人よりも多い割合となっています。
アセクシュアル・アロマンティックの人は、外見的な違いはほぼなく職場でも具体的な制度や設備を希望することもほぼありません。ただ「恋愛するのがあたりまえ」という価値観と異なる人がいるということをわかってほしいという声が多いです。

最後にKさんはこう言っていました。「世の中のドラマや映画のほとんどに恋愛はでてくるので、多分、恋愛ができると楽しいんだろうな、とは思いますが、ただそれがなくてもほかにも楽しいことはいろいろあるので自分自身はこのセクシュアリティでも十分幸せです」。