契約企業の概要

IT事業を展開している中堅企業のA社。社員数は500名ほどで、LGBT取り組みに関しては数年前から研修/eラーニングを実施し、また社内でセクシュアリティをオープンにして働いている人も数名おり、会社としても各職場としても働きやすい職場環境づくりに取り組んでいます。

相談内容

ご相談をいただいたのは、トランスジェンダーのKさんからです。Kさんの戸籍は女性ですが、性自認は男性のトランスジェンダー男性です。入社時は女性として働いていたのですが、1年ほど経ったところで、A社のLGBT取組や職場の雰囲気もわかってきたというところで、弊社の相談窓口にご連絡をいただきました。

そのときは、男性として働きたい、というご希望で、服装や髪型、メイクなどについてより「男らしい」スタイルでの働き方を希望していました。A社としても、カミングアウトをして働くトランスジェンダーはKさんが初でしたが、Kさんの希望にできるだけこたえる形で対応をしておりました。

そんなKさんですが、今回は、より男性らしい働き方を進める一環として、「通称名を使いたい」ということでした。通称名の使用自体は、人事部に相談してOKということでしたが、具体的にどんな場面なら通称名が使えるかという点でのご相談でした。

税金や社会保険など公的なもの以外の名刺、社員証、メールアドレスなどの社内で完結するものはすべて通称名の使用が可能という回答を人事部からもらったのですが、Kさんとしては「公的書類での通称名の使用は無理ですか?」という質問でした。

弊社の外部相談窓口対応

通称名の使用に関しては、社内に関しては、業務フローやシステムの条件によって制約がありますが、基本的には会社さえ認めれば自由に使用することができます。

一方で、公的書類は戸籍の名前と性別が原則になります。ただし、健康保険証に関しては、通称名の使用が可能になっているので、それを企業の人事部にお伝えして、人事部から保険組合に問い合わせをした結果、Kさんも健康保険証は通称名が使えるようになりました。

 

健康保険証が通称名などの対応ができることで、病院で名前や性別の不必要な確認などがなくなりストレスが軽減されるという直接的なメリットと同時に、公的書類での通称名の使用は、氏名変更するにあたって裁判所に提出する通称名の使用実績としては強力な証明となるので、よりスムーズな氏名変更が可能になるという利点もあります。

この健康保険証の通称名使用に関しては、厚生労働省から2017年8月31日付けで「性同一性障害と診断された人が日常で使う『通称名』を、健康保険証の氏名欄に記載することを認める」という通知が全国の保険組合などに出されているのですが、実際に対応事例がなかったり、担当者がこの通知を知らなかったりした場合には、通称名の使用を断られることも事例としてはまだあります。あるいは、トランスジェンダーの当事者でも保険証に通称名が使えることを知らない場合もあります。

もしトランスジェンダーの社員から通称名の使用について相談があった場合には、保険証の対応まで検討できると、働きやすさにつながると思います。

 

なお社会保険における通称名と性別表記について、現時点では以下のような対応が可能となっています。

(氏名表記)
保険証の表面の氏名表記欄には通称名を記載し、裏面の特記事項等に「戸籍上の氏名は△△」と記載します。

(性別表記)
保険証の表面の性別表記欄には「裏面参照」と記載し、裏面の特記事項等に「戸籍上の性別は男(女)」と記載します。

保険証の裏面には戸籍上の氏名と性別が記載されますが、表面には記載されない形式です。