自治体での同性パートナーシップ制度は年々、急速に増えており、人口カバー率では70%程度に達しています。
企業においても、同性パートナーにも法的な婚姻関係と同様の福利厚生制度の適用をする制度の導入が進みつつあります。
一方で、社員が数千人いる企業でもパートナーシップ制度の利用者はわずか数名ということが多く、なかなか利用者が増えていない現状があります。
今回は職場で同性パートナーシップ制度が導入されたけれど、利用していないというKさん(ゲイ)にお話をお聞きしました。
私は現在の職場に中途で入社して5年目、31歳になります。
今の会社ではLGBTQの取り組みを数年前から始めていて、全社員へのeラーニングや、希望者向けの研修もやっています。同性パートナーにも福利厚生が適用されるパートナーシップ制度も3年前に導入されました。
会社としては、PRIDE指標も受賞していて、比較的、理解はあるほうだと思います。私はゲイで、3年付き合っているパートナーがいます。その人とは一緒に暮らしているので、会社のパートナーシップ制度を利用することは可能なのですが、まだ申請はしていません。
パートナーシップ制度を利用するかどうかは、パートナーとも何度か話し合っていますが、現状は、まだ迷っています。
その理由は、まず、私が入社した当時はまだまだ社内でもLGBTQに関する理解もあまりなく、私に向けてではないのですが、LGBTQ全体をからかうような発言を聞いたりしたので、いくら制度があってもちょっと怖くて使えないというのがありました。ただその後、研修とかもあって、少なくとも管理職の人たちは、そういう発言をしなくなったので、その点は少し安心できるかなという気にもなっています。
また福利厚生制度の適用といっても、私の会社の場合は、結婚のお祝い金や休暇はあるものの、毎月の手当とかはないので、それほど金銭的なメリットもなく、そのためにカミングアウトをする必要もないかとも思います。
最後に、これが一番大きな理由ですが、パートナーが反対していたのです。彼は完全にクローゼットなので、自分が同性愛者であることが書類として残ることが不安みたいでどうしても賛成してくれません。
私自身は、職場では誰にもカミングアウトをしてないですが、友人や親にはカミングアウトをして比較的理解してもらっているので、そこまで抵抗はない一方で、彼の不安な気持ちも分からなくないという感じです。
ただ、昨年、東京都のパートナーシップ制度がスタートしたのをきっかけにして、もう一度、彼と話しました。
彼の友人が東京都のパートナーシップ制度に申請をした話をきいて、彼の気持ちも少し変わったみたいです。
東京都の場合はオンラインで完結するので誰にも会わなくていいというのもあり、今年にはいって思い切って申請をし、パートナーとして認定されました。ただそれだけのことではあるのですが、彼も私も、誰かにちゃんと認められたということには嬉しさを感じました。
職場のパートナーシップ制度の申請についてはまだ決めていないですが、金銭的なメリットというより、周りの人にちゃんと認めてもらうというのもいいな、という想いもあるので、また彼と前向きに相談していこうと思います。
一年前に話をした際には、Kさん自身も会社の制度に申請することはあまり前向きではなかったのですが、今回お話をしたときには、かなり前向きに考えているのが伝わってきました。
自治体のパートナーシップ制度は渋谷区・世田谷区で導入されてまだ7年ちょっとです。当事者の中でもパートナーとして公的に認められるというのが、この数年で当たり前になりつつあると感じます。
社会の理解や当事者の考えの変化とあわせて職場での理解浸透が進むと、パートナーシップ制度もより利用しやすくなると思います。