LGBTに関する研修をしていると、『トランスジェンダーの人の働きにくさは何となく想像がつくけれど、ゲイやレズビアンの人など性的指向に関しては、仕事に直接関係ないから、働きにくさがあまりイメージできません』という声を聞くことがあります。

確かにトランスジェンダーの人は働き方に関する具体的な希望が明確になっていることが多いです。
しかしゲイやレズビアン、バイセクシュアルなどの人の中にも働きにくさを感じている人は多くいます。
また、同じセクシュアリティであっても、その働きにくさの原因は異なることがあります。

今回は、レズビアンのIさんが感じる働きにくさについてお聞きしました。

私は、30歳のレズビアンで同性のパートナーと2歳の息子と一緒に暮らしています。

今の会社には、4年前に中途で転職してきました。
仕事内容としては、営業サポートという役割で、営業関連のデータ入力や提案書、見積書の作成など事務的な仕事がメインになっています。

パートナーとの付き合いは7年ほどになり、4年前、今の会社に転職をしたときに、一緒に暮らし始めました。

前の会社では一切カミングアウトをしていなかったのですが、職場の同僚にたまたま私のスマホに入っている写真を見られたことがありました。
その中にパートナーと遊びに行ったときの写真が入っていて、それを見て、『えっ、レズとかじゃないよね⁉』と言われたことがあります。
ただの友達、ということで誤魔化しはしたのですが、そのときの同僚の言い方が、信じられない!という感じだったので、これは絶対にバレないようにしなきゃいけないと思いました。

2年前に精子提供を受けて、今は息子が一人います。産んだのはパートナーのほうなので、私は現在の会社には何も言うことはなく、そのまま働いています。
今は、パートナーも育休があけて仕事に復帰しています。

最近困っているのが、子どものお迎えです。息子を保育園に入れていて、普段は私の仕事終わりに迎えに行っているのですが、子どもなので急に熱を出して休んだり、保育園からお迎えの電話がかかってきたりすることがあります。

パートナーは仕事があってなかなか迎えに行けないので、私がいくことになるのですが、その早退や休みの理由が正直に伝えられず、困っています。
急に自分の体調が悪くなったことにして早退とかをしているのですが、もともと病欠もほとんどしていなかったので、不審な感じがあると思います。

私自身は正直に言えば、この仕事でどんどんキャリアアップしていきたい!というよりも、仕事と子育てを両立させたいと思っています。
保育園からの呼び出し自体も仕方ないことなのでそれは気にならないのですが、ただ周りに迷惑をかけているのと、その理由を言えないというのが気になっています。

直属の上司は、同じ女性で子育てもしている人なので、カミングアウトをしても理解してもらえるかもしれないと思います。
ただ、職場の同僚にも迷惑をかけるので、結局は上司だけでなく、同僚みんなに事情を説明しないといけないと考えると、以前の体験もありなかなか言い出せないというのが現状です。

Iさんは、子どもが生まれるまでは、レズビアンということを職場に隠していること自体は、それほど気にはなっていなかったし、周囲に理解をしてほしいという気持ちもあまりなかったそうです。

一般的に性的指向がマイノリティという場合には、職場に具体的に求める配慮事項というのは少ないのですが、今回のように具体的な配慮を希望するケースもあります。
企業の立場からすると、今回のケースでは、新たな制度を考えるというのではなく、職場の理解を深めていくことが大切になります。