契約企業の概要
全国展開をしている小売業のA社。LGBTの取り組みは数年前から始めていて、従業員向けの研修、お客様を想定した接客マニュアルの作成・対応研修などを実施しています。また社内にセクシュアリティをオープンにして働いている当事者も複数名おり、社内外に相談窓口を設置しています。
相談内容
今回のご相談者は、店舗で販売職として勤務するKさん(31歳。戸籍変更済みのFTMトランスジェンダー)です。
Kさんからは次のような相談をもらいました。
『私は戸籍変更済みのトランスジェンダーです。職場の同僚の一人からトランスジェンダーじゃないの?と嫌がらせをうけています。職場でも人事にも一切カミングアウトはしていないので、相談することもできません。どうするのがいいでしょうか?』
Kさんからさらに詳しい事情をお聞きしたところ、Kさんは数年前に性別移行手術をして、戸籍も女性から男性に変更したうえで、今の職場に入社したそうです。
職場でもプライベートでも女性に見られることはほぼないけれど、身長が163cmと男性としては小柄というのもあり、同僚の一人から嫌がらせを言われているということだそうです。
その同僚も、Kさんをトランスジェンダーと知っているというわけではなく、からかっている感じではあるものの、Kさんとしては本当にやめてほしいと思っていて、実際に何度もこの同僚に止めるように言っても態度を改めずしつこく言ってくるそうです。
このままでは仕事にもいけなくなりそうとの不安を吐露していました。
上司に相談をする場合には、自分のセクシュアリティの話になるかもしれないので相談ができないとも言っていました。
弊社の外部相談窓口対応
Kさんの状況を具体的に改善するためには、いくつか方法はありますが、少なくとも人事部にはKさんの個人情報を共有したほうが、結果的に働きやすい環境づくりにつながりやすいと考えられました。
ただ、Kさんとしては、会社としていろんな取り組みをしているし、カミングアウトをして働いている人がいるのも知っているものの、職場でのカミングアウトは絶対に嫌で、人事部と言っても顔が見えず、カミングアウトにはかなり不安があるとのことでした。
何回か、Kさんとお話をしていく中で、人事部の中でも人を最小限に限定すること、名前を記録に残さないことを条件に、人事部に話をしても良いということになりました。
人事部では、ダイバーシティの担当者2名と人事部長の、計3名だけに情報共有をしたうえで、Kさん本人を交えて三者で相談をし、会社からは次の3つの対応方法が提案されました。
- 同僚に厳重注意をして、嫌がらせをやめさせる
- 職場全体に啓発活動をする
- Kさんが部署異動をする
Kさんとしては、同僚に嫌がらせをやめさせるというのが一番よかったのですが、それでは職場へのカミングアウトにつながってしまうし、職場全体の啓発活動ではKさん自身の状況がすぐに改善しない可能性があり、またちょうど異動の時期であったこともあり、他の店舗にKさんが異動するという形で、Kさん自身も納得して解決にいたりました。
人事としては、LGBT当事者の状況を把握することでハラスメントを防止し、働きやすい環境づくりをしたいと考えがちですが、特に性別移行済みのトランスジェンダーの人は、人事部も含めて、誰にもカミングアウトをしない≒埋没した働き方を希望するケースも多くあります。
今回はKさんが異動という形で解決に向かいましたが、そのような形をとれない職場や職種もあるからこそ、そもそもの風土づくりや啓発活動を進めていくことが大切になります。
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