『女子サッカー選手です。そして彼女がいます』
女子サッカー選手としてドイツや日本で活躍をしていた下山田志保さんが、セクシュアリティに関連する自分自身の悩みや体験談を話してくれています。
人と自分は何かが違うということでモヤモヤした気持ちを持っている人が、「自分が生きたいと思う生き方はどうしたらできるのかな」とワクワクできるようにという想いを込めて書かれた本です。
LGBTとスポーツというのも最近、特に注目をされているテーマの一つです。オリンピックをはじめとして、ホルモン治療をしているトランスジェンダーの競技参加についてさまざまな意見があり、世界的にもどうあるべきか模索している最中です。
本書ではこの部分とは別に、女の子らしさを求められることや、異性愛前提という社会の“ふつう”に対しての著者の想いや体験が描かれています。平易な言葉で書いてあるので、読みやすく、子どもにもおすすめです。
書籍概要
私は女? それとも男? どの性の人を好きになる? LGBTQってなに? 男女の格差って? 自分の心や体とどう向き合う? 人とはちがう何かを持っていることでモヤモヤしているみんなへ。ひとりの女子サッカー選手が伝える「自分を大切にするため」の話。
目次
・男? それとも女? 自認する性の話
・だれを好きになる? 好きになる性の話
・「女なんかに負けるな」 スポーツとジェンダー
・生きたいように生きる 自分の身体とのむきあい方
印象的なコンテンツ
『「理解できない」といわれることもありますが、それでいいんだろうなと。わたしたちはまったくちがう人間で、おたがいのことを100%理解できるわけないと思えたほうが楽』(P58)
下山田さんが自分の性別について、男性でも女性でもなく、決めようとも思っていない。女性として生まれてきた事実は受け止めるけれど、他人から女性としてあつかわれるのはほんとうに嫌、という自分自身のセクシュアリティに関する想いに対して、周りの受け止め方について書かれている部分です。
“LGBTの理解”という言葉はよく使われますが、“理解”というのはどういうことなのか?ということに対する下山田さんの考えがよく表れています。
『チームメイトとして、パスを出してくれなくなるんじゃないか?』『好きなタイプと聞かれれば「足が速い人」「足の筋肉がカッコいい人」と答えていました』(P72)
大学でサッカーを続けるなかで、変だと思われないように必死に嘘をついていたそうです。自分がいきたい下山田志帆の人生ではなく、“みんながもとめる”下山田志帆の人生を生きていたという感覚です。
『シモは、男の子と女の子、どっちが好きなの?』(P87)
ドイツチームに入ってすぐ、チームでの飲み会の席で聞かれた質問です。同性婚が法的に認められており、LGBTがあたりまえに社会にとけこんでいるからこそ、なんの先入観もなくこのような質問がでてきました。
感じたこと
下山田さんは、『LGBT当事者だからつらい体験をしてきていて、かわいそう』と思われることにモヤモヤを感じています。書籍の中では耳の聞こえないサッカー選手の話もでてきますが、日常生活で困ることがあるのと、幸せかどうかは別の話と語っています。
“ふつう”=幸せ、という基準を押し付けることがLGBTに限らず、マイノリティの人にとっての生きづらさにつながると感じました。