『マンガでわかるLGBTQ+』
ジェンダーやセクシュアリティについての体験を、短編マンガという形でSNSで発信しているパレットトークという編集部が著した書籍です。
LGBTに関する基礎知識や、さまざまなセクシュアリティの当事者の体験談などを19の短編マンガで紹介しています。体験談にはLGBT当事者の話だけでなく、マジョリティ側のシスジェンダーや異性愛者も描かれているため、共感しやすい点も多いです。
各章には解説やよくある質問もついているので、なんとなく興味がある人から、もっと詳しく知りたいという人まで幅広く対応しています。
絵の雰囲気も柔らかく優しい感じで、あくまで体験談が中心なのでとても読みやすい入門書です。
書籍概要
目次
CHEPTER1 LGBTQ+ってなんだろう?
CHEPTER2 体験談から考える、さまざまなシチュエーション紹介
CHEPTER3 男らしさ、女らしさから解き放たれて
CHEPTER4 LGBTQ+と法律
CHEPTER5 これからの社会と多様な性のあり方
印象的なコンテンツ
CASE6『求められる「ゲイらしさ」を演じていた、元同僚の話』(P59~P62)
職場でゲイであることをカミングアウトしているタク。深刻に受け止められるのが苦手ということもあり、周囲が求めるオネエキャラを演じていましたが、自分を偽ることにつかれて、最終的には“体調不良”という理由で退職してしまいます。
『ゲイとはこういうものという固定観念をもっている人はまだ多いかもしれない。ゲイといってもそのあり方はさまざま、そういうことがもっと広まっていけばいいなと思う』
男らしさ、女らしさだけでなく、ゲイらしさを無意識に求める人はいますが、男性にもいろいろな人がいるように、ゲイにもいろいろな性格や価値観の人がいます。
また、このタクさんは本当の退職理由を会社に伝えていません。職場でカミングアウトをしている人であっても必ずしも働きやすいというわけではないというケースです。
CASE8『グラビアに興味がないと言ったら、「それでも男かよ」と笑われた話』(P79~P82)
シスジェンダー・ヘテロセクシュアルというマジョリティのダイスケが、XジェンダーAセクシュアルのタカヒロ、シスジェンダーゲイのシュンの2人に飲みの場で悩みを吐露します。
『男たるもの!女好き!裸のつきあい!男の友情! これができてこその一流!みたいな。逆にそういうノリにあわないやつのことを「男として格下だ」と排除しちゃうみたいな』
ダイスケの悩みは、ホモソーシャル(※同性同士の性や恋愛を伴わない絆や繋がり)を職場で押し付けられることでした。
ダイスケはLGBTではなくマジョリティ側です。それでも周囲の求める男らしさに合わせることができず生きづらさを感じています。
Work『こんなときあなたならどうする?飲み会で酔っ払った友達が・・・おい、C!そろそろ彼女作れよ~ホモだと思われるぞ~』(P165)
本書は、体験談だけでなく、このように考えるworkも随所に紹介されています。
この場合の対応について、本書には正解は書かれておらず、いくつかの選択肢と考えるヒントが書いてあります。
研修や勉強会などでディスカッションしてみるのも良いかもしれません。
感じたこと
本書は一貫して、読者に考えることを促しています。
LGBTの話は最低限の知識を覚えるということも必要ですが、LGBTといっても人それぞれ違うからこそ、一人ひとりが考えることがより大切だと思います。
全編マンガで描かれており、さまざまな当事者の体験談が掲載されているので、読みやすくバランスが取れています。入門書としておススメです。