『ハピエスト・ホリデ― 私たちのカミングアウト』
同性愛カップルを主人公とし、クリスマスと家族へのカミングアウトを絡めたハリウッド映画です。
同性愛(レズビアン)を公表しているクレア・デュヴァル監督が、自身の経験をベースに、LGBTが主人公のクリスマス映画を見たいという気持ちで製作したそうです。
レズビアンカップルのカミングアウトを軸に、アメリカの保守的なエリアでの家族の在り方を描いており、笑いあり涙ありのハリウッドらしい映画です。
休日に、肩肘張らずにリラックスして楽しめる映画です。
ストーリー
恋人の家族に初めて会う時は大変なもの。恋人ハーパーの実家に向かうアビーはプロポーズを計画していた。
しかし当日、ハーパー自身がレズビアンであることや彼女たちの関係を家族に隠していると知る。
想定外の事態で家族との初めての対面は、ますます大変なものに!さらに滞在中、アビーは彼女の家族や友人との交流を見て自分が思っていた人とは違うのではないかと疑問を持ち始める…。
初めて会う家族に認めてもらいたい、自分に正直でありたい、そんな様々な思いを家族それぞれが抱えながらも、クリスマスに家族が集まってくる。
印象的なシーン
恋人のハーパーのお母さんから『アビーは彼氏がいるの?』と聞かれたアビーは『いえ』と否定した途端に、不自然と感じたのか『いや、います。そうです。いっぱいいました』と答えます。
娘の友人に初対面の会話のアイスブレークとして、彼氏の話をしています。
見ている観客はアビーとハーパーが同性愛だとわかっているので、ハラハラする部分ですが、何も知らないと、まったく気にせず見過ごしてしまいやすいシーンです。
アビーは、恋人のハーパーにプロポーズをし、彼女の父親に結婚の許可をもらおうとして指輪を購入します。
それに対してアビーのゲイの友人は『なんで(結婚という)古臭い制度にこだわって、いい関係をぶち壊そうとするんだ。愛している人を異性愛規範の枠組みにはめ込んだり、相手を自分のものにしようと縛り付けたりすることになるんだよ』と忠告をします。
家族(パートナー)という形は、従来の結婚というスタイルだけでなくもっと多様であるべきだし、それによってもっと生きやすくなるかもしれないという一つの価値観を伝えています。
『ハーパーはレズビアンなの!』ハーパーが同性愛者であることを知った姉がクリスマスパーティーの最中の口論の中で大声でアウティングをしてしまいます。
『嘘ついてる!わたしはレズビアンじゃない!!』とハーパーは自分自身を守りたくて、恋人のアビーの前で否定してしまいます。
アビーは自分の存在を否定され、パーティーから逃げ出します。
『ゲイだと知られたらパパの邪魔になる。本当の姿がばれて理想の子じゃなくなるのが怖かったから』
ハーパーが同性愛であることをカミングアウトできなかった理由を家族に伝えるシーンです。
市長選挙に出馬予定の父はすべてにおいて保守的で旧来の価値観を大切にしていたために、ハーパー以外の姉妹もさまざまな悩みを家族に共有できずに苦しんでいます。
感想
セクシュアリティとは関係なく、田舎の窮屈さ、家父長制の悪癖などが詰まっており、クリスマスのゲストであるはずのアビーは、ハーパーも含めて家族から酷い態度をとられ続けるために、物語の後半までイライラが募る展開です。
最後は、ハリウッドの娯楽映画らしく、ややご都合主義観はありますがハッピーエンドにつながっていきます。
レズビアンの監督が2020年に製作したアメリカ映画ということも頭にいれつつも、さらっと見られる映画です。
アビー役を演じるクリステン・スチュワートが終始、格好良いので、その点でもおススメです。