2025年の法改正により、「労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」および関連法は、従来の社内ハラスメント対策から一段進み、カスタマーハラスメントや求職者への対応まで含めた包括的な枠組みへと拡張されました。
この改正は2026年10月1日施行とされており、企業には新たな義務対応が求められます。

今回の特徴は、「対象範囲の拡大」と「指針の具体化」です。そしてその中で、SOGI(性的指向・性自認)に関するハラスメントは、より明確に“防止すべき行為”として位置づけられました。

今回の改正により拡大した対象範囲は以下の2点です。
・カスタマーハラスメント対策の義務化
・求職者等に対するハラスメント対策の義務化
つまり、ハラスメント対策はもはや「従業員同士の問題」ではなく、 社外との接点(顧客・応募者)を含めた組織責任へと拡張されています。

 

これらも踏まえてSOGIに関するハラスメントについては、法律条文自体は抽象的なままですが、指針レベルでは以下の考え方がより明確になっています。

① カミングアウトに関する取扱い

  • カミングアウトの強要
  • カミングアウトの抑制
  • 本人の意思を無視した情報共有(アウティング)

これらはすべて、就業環境を害する行為となり得ます。
これらは 「善意であってもハラスメントになり得る」という点は重要です。

② 社外ハラスメントとしてのSOGI

カミングアウトの取り扱いやアウティングなどについて今回の改正により、顧客や取引先による言動も対策対象となりました。例えば:

  • 顧客が従業員の性自認を揶揄する
  • 取引先が性的指向について詮索する
  • 外部関係者が差別的発言を繰り返す
    これらに対して企業が何も対応しない場合、「措置義務違反」と評価される可能性があります。

③ 採用・インターン領域でのリスク

求職者に対するハラスメント防止も義務化されたことで、

  • 面接での不適切質問
  • インターン中の無配慮な言動
  • 性的指向や性自認に関する詮索
    といった行為も、明確にリスクとなります。

実務的には、SOGIに関するハラスメントは、典型的な暴言よりも曖昧で日常的な形で発生することも多くあります。
例えば:

  • 「その話題は控えてほしい」と無意識に排除する
  • 「理解ある会社だから話してほしい」と開示を促す
  • 本人不在の場で性的指向を共有する
  • 顧客の発言を「仕方ない」と受け流す

これらはいずれも、本人の尊厳や心理的安全性を損なう行為であり、ハラスメントに該当する可能性があります。

 

今回の改正により、企業の責任は明確に変わっています。
従来は社内のルール作り、問題発生後の対応というのが中心でしたが、今後は、社外(取引先、求職者など)への対応を意識した取り組みが必要になります。

これまでもSOGIハラスメント予防の観点から

  • ハラスメント方針へのSOGI明記
  • カミングアウト・情報管理ルールの整備
  • 相談窓口の設置
  • 管理職・採用担当者への教育
    などは行われてきましたが、それらを社外への対応も考慮した形で実施していくことが必要です。

特に『お客様は神様です』という文化が少なからずある中で、対企業も含めたカスタマーハラスメント対応というのはルールづくりだけでなく、風土づくりも関係するので、現場の管理職の役割がより重要になってきます。