書籍概要
『同性婚―私たち弁護士夫夫です』
ゲイをカミングアウトして活躍している南和行さんが、自身の同性婚や弁護士として関わってきた同性愛者の葛藤と困難、そして法律が家族や婚姻をどう捉えているかについてわかりやすくまとめています。
『同性愛者の知り合いが一人もいない』『今まで同性愛者に会ったことがない』という人こそ、この本を読むことで、同性愛者だけでなく多様な性を身近に感じることができます。同時に2019年にホットになるであろう“同性婚”というテーマをいろいろな見地で見るための参考になる書籍です。
印象的なコンテンツ
『母はこの日の結婚式が大きな節目になったと、今でも言う。肯定できない気持ちもあったようだが、私と彼が結婚式を挙げたことで、私と彼が同性愛者として、最愛のパートナーと一緒に暮らすことが幸せなのだと理解できたという』(63頁)
著者が、イタリアンレストランで人前式の結婚式を同性パートナーとあげたときに、著者の母親は同性パートナーの存在を受け止められたのかもしれません。
結婚式というのは異性婚の場合も、本人同士のためだけでなく、家族のためもあるといわれます。本人以外の話というのはなかなか聞く機会はないので印象的です。
『本当にカップルである人と、虚偽でカップルだと言っている人をどうやって見極めるのですか?』(89頁)
これは自治体の制度でも、企業のパートナーシップ制度でもよく聞かれる問いです。異性のカップルは法律上の婚姻関係を形成したかどうかで本当のカップルと線引きされます。形式を重視するのなら、同性カップルについても婚姻届けのようなものを出せる機会があっても良いのではないか、という考えはわりとしっくりくる人も多いのではないでしょうか?
ただそれが同性婚という形なのか?どんな形式なら本当のカップルを定義できるのか?そもそも本当のカップルとは何か?というところの考えはかなり人により分かれています。
『子供が生まれる枠組みこそが結婚である、という家族モデルにこだわる民法772条を、家制度の名残だと考える。それゆえ同性カップルを含む多種多様な家族を法律上保護するためには、この民法772条を乗り越えることが重要である』(128頁)
この書籍で、この章がいちばん、面白かったです。
誰を好きになるのかに性別の違いはない、という考えは比較的多く聞かれます。著者は弁護士です。法律は結婚をどうとらえているかということを解説しています。法律は愛情を保護しているけれど、愛情だけでなく家制度≒子供を産み育てるという考えも保護しています。
だからこそ、“好き”という話だけでは同性婚の話もできないとも言えます。
感じたこと
婚姻関係にある異性カップルと比較して、同性カップルが被る不利益の事例として、不動産を共有名義にする(住宅ローンの収入合算)や生命保険の受取人になる、ことができないと紹介されています。
この書籍は、2015年に出版されています。それから3年。今ではみずほ銀行や楽天銀行を利用すれば住宅ローンでの収入合算は可能になりました。生命保険の受取人を同性パートナーにできる保険会社も数多くあります。
3年でここまで変わります。2019年で何が変わるか?ここからの5年で社会制度や社会の理解はどれだけ進むのか?2019年は同性婚が注目キーワードです。