“LGBTのトイレの話”といっても、トイレに困難を抱えているのは基本的に性自認に関わる話です。トランスジェンダーやXジェンダーの人向けの話です。
LGBTについての話をすると、第一声で「トイレとかって・・・」と聞かれることが非常に多く、それだけトイレ問題は、話として浸透しているのだと感じます。
LGBT取り組みを進める企業で、企業がトイレについて悩む理由を整理してみました。
- 理由1
トイレに悩みを抱えているのはトランスジェンダーやXジェンダーの人ということでLGBT全体でいえば、一部の人ではあります(この前提が抜けているケースを散見)が、トイレの問題は一日に何回も行くものであり本人にとっては切実な問題です。 - 理由2
本人の希望も、本人の状況(移行や治療)もいろいろなので、どうするのが良いのか企業としては判断しにくいです。同じトランスジェンダーといっても戸籍性のトイレを使いたい人、戸籍性とは別のトイレを使いたい人、誰でもトイレを使いたい人などいろいろです。また自分の希望はあってもパス度なども絡めて考えるとそれも難しいというケースもあります。 - 理由3
コストの問題。
誰でもトイレの増設、というのは一つのそして有力な解決方法ではあります。でもその設置にかかるコストは小さくなく、どれだけの人が必要としているのか?と考えるとなかなか設置に踏み出せないという企業は非常に多いです。
トイレの設置は、費用対効果で考えるべきではないという意見もありますが、現実的にはこういう判断をするケースが多いです。 - 理由4
コストの問題とは別に、そもそも誰でもトイレではなく、戸籍性と違う性別のトイレを使いたいというニーズもあります。この場合に、ほかの従業員から反対の声があがることがありえます。一番、多いのはMTFで女性用のトイレを使用する場合に、女性従業員からイヤ!といわれるケースです。同僚が同性愛であったとしても、あるいは通称名を使いたいという希望などにはとても理解を示す人でも、トイレを一緒に使うのは抵抗があるというケースもよく聞きます。トイレは他人事ではなく、自分も関係する自分事だからです。 - 理由5
理由4の周りの従業員の拒否反応を改めさせるということを、上司や会社が強制することが難しいです。ある職場ではMTFトランスジェンダーが入社することに対して反対する女性は一人もいなかったのですが、同じ女性用トイレを使うことには2名の社員が反対をしました。女性社員は全部で26名いたので、90%以上は賛成していても、この2人の反対意見のために、この採用の話はいったんストップになりました。
改めてまとめると、理由の4と5は他の取り組みとは大きく異なる特徴です。トイレというのは生きるうえで基本的な話である一方で、極めてプライベートな話です。だからこそ、同じ従業員同士での対立が生じるケースがあり、かつ解決方法がコスト面だけでなく難しいという話なのです。
トイレをめぐる裁判も起こされており、近いうちに判決がでるようです。今後企業としてどうすべきか、一つの指針にはなるでしょう。