契約企業の概要
中堅のIT企業。PRIDE指標は取得していないが、社員の平均年齢も若く比較的、ダイバーシティ&インクルージョンに対して理解のある社風。LGBTに関しても研修やeラーニングは実施し、またパートナーシップ制度も導入している。
社内でカミングアウトをして働いているLGBT当事者はいない。パワハラ防止法施行に伴い、LGBT専用の社外相談窓口の設置をしている。
相談内容
社外相談窓口を設置して、まもないタイミングでご相談をいただきました。
『私はゲイです。LGBT相談窓口を設置するなど会社として取り組もうとしているのは分かるのですが、実際には、飲み会の場などでよく『彼女いないの?』と聞かれて困っています。こういう場合、どうしたらいいのでしょうか?』
『彼女いないの?』『結婚しないの?』と聞かれて困るという悩みはよく耳にします。
状況やシチュエーションにもよりますが基本的にはセクハラに該当する可能性もあり、最近ではこのような発言自体は減っていると言われております。しかし男性に対してのこのような言葉はあまりセクハラ意識を感じないのか、特にゲイのかたからこのような相談をいただくことが多いです。
この方の場合は、どのように困っているのか(程度や影響の範囲など)を確認するために何度かメールでやりとりをしました。
『職場では、仕事に関係ないとはいえ、同僚との雑談をする中で恋愛や家族の話がでてくるのは自然だとは思っています。特に飲み会の場ではやっぱりそんな話が盛り上がりやすいと思います。
『彼女いないの?』という質問自体に苦痛を感じるとか、ハラスメントだ!とかは思わないのですが、単純にどう返していいのか迷うという感じです。』
弊社の外部相談窓口対応
相談者は31歳の男性です。この企業に新卒で入社して8年経ち、社風もよく理解しているし周りの同僚ともいい人間関係で働けているとのことでした。仕事内容も含めて、仕事には満足をしています。今回LGBTの制度ができ、社外の相談窓口ができたので前から感じていた困りごとをちょっと相談してみたそうです。
人事部などに悩みを相談したいとか、こういう質問や会話がなくなるようにしたいというご希望ではなく、自分自身の対応をどうするのがいいか?という観点からのご相談でした。
ご相談をいただいたすぐ後に、さまざまな企業に勤めるゲイのかたが数名集まるオンラインイベントを開催する予定がちょうどあったので、このかたを誘って参加していただきました。
当日は、10名弱のゲイの方がオンラインで集まって各職場での悩みの相談や情報共有などを行い、その中でこの『彼女いるの?』の対応の話もしました。
対応としては、いろいろな意見があったのですが集約すると次のようなものになりました。
- 実際につきあっている彼氏を彼女に置き換えて答える
- 彼女(付き合っている人)はいないと答える
- 回答をしない(はぐらかす)
- 彼氏がいます!と答える
当日参加していたゲイの方はほとんど職場ではカミングアウトをしていないので、『彼氏がいます!』と答えているというかたはいませんでした。実際には①から③の対応になるかな、ということでした。
相談者としては、このような話は絶対的な正解があるわけではないので、次に同じ質問されたらどう答えるかはやっぱり迷う反面、近しい境遇の人と話ができて少しすっきりしたようです。
対応を最初から決めるのではなく、自分に無理のない範囲で自然体で対応していき、いつか『彼氏がいます!』と言えるようになりたいということでした。