2021年4月に新卒として入社をするMさんの話です。就職活動において何を軸に企業を選ぶのか、またLGBTが働きやすい職場というのはいろんな考えがある中で、このMさんは何を大切に就活をしたのか、就活をしてみて企業の対応で感じたことなどをお聞きしました。
私のセクシュアリティは戸籍男性のXジェンダーです。女性になりたいという気持ちはありませんが、男性か?と言われるとちょっと自信がないというか、違和感があります。
もうじき新卒として社会人になります。改めて私の就活を振り返ると、内定を3つもらい、迷いはしたけれど最終的には自分で選んだ会社に入社することになったので、結果的には良かったと思っています。ただ就活の過程ではセクシュアリティに関して自分自身が、かなり悩み、翻弄されたという気もしています。
私が就活を始めたときに、まず就職先をどうやって選ぶかを考えました。私自身は特にこの職種や業界がいいというのはなく、最初はなんとなくのイメージや知名度でいろんな会社の説明会に参加しました。その中で、商品やサービスが魅力的なものを取り扱っている企業がいいと思うようになりました。もちろん、どんな会社の商品も買う人がいて、欲しい人がいるので社会に貢献していると思います。ただその中でより自分が魅力的!と感じるものを扱いと思いました。それは、消費者として感じるものでもいいし、toB向けの商品であっても魅力を感じれば、その企業も受けるようにしました。
就活の最初は、内定がとりたい!というのが強く、戸籍と同じ男性として、就職活動をしていました。メンズのリクルートスーツを着て、髪も短くしていました。選考においても一切カミングアウトをせずに、運よく3社から続けて内定をもらえました。
その中でもっとも会社の雰囲気が良かった1社に決めてほかは辞退をしました。ただその後、そこで実際に働いている人の話をいろいろ聞いていくうちに、これでいいのだろうか?という疑問を感じました。
働いたことがないので想像でしかないのですが、自分が働く姿をイメージしたときに、このままだと窮屈で肩が凝りそうな感じがしました。商品の魅力だけではなく、自分自身を良い!と思ってくれる会社じゃないと息が詰まりそうな気がして、思い切って自分のセクシュアリティをカミングアウトしました。
その会社は、受けた中で唯一、エントリーシートに性別欄がなく、HPでもLGBTについて触れていたので、好印象だったというのもあります。
この企業は大手だったのもあり、驚かれはしましたが直接的に酷いことを言われることはありませんでした。人事部長とも直接お話ができました。そこでは、『会社として差別はしないし、できるだけ希望も聞きたい。ただあなたみたいにカミングアウトをして入社した人はこれまでいないので、どこまで希望に添えるかはわからない。例えば男性社員は基本的にスーツを着ているのでそこは理解してほしい。慣れればネクタイとかは外していても大丈夫だから』ということでした。あと『職場ではいろんな人がいるので、カミングアウトをしたら、心無いことをいう人がいないとは言えない』ということも言われました。
メンズスーツを絶対に着たくないというわけでなかったし、職場に理解のない人がいることもわかります。一方で人事部長の言葉に暗に辞退を促している感じを受け、正直迷いました。
本来、就活の最初から自分というものをもっと出して選考を受けておいたほうが良かったのかもしれない、このまま入社したら自分も働きにくいかもしれないけれど、会社にも迷惑なのかもしれない、こんなことも考えました。
ぐちゃぐちゃと悩んだのですが、この会社の理念や事業内容に魅力を感じていたし、また時期も遅くなっていたのもあり、最終的には入社を決意しました。実際に働き始めたらセクシュアリティに関連して、働きにくいこともあるかもしれないけれど、なんとか頑張っていこうと思っています。
Mさんのように、LGBTの中でもトランスジェンダーやXエンダーの就活生は、どのような就活をするか悩むケースが多いです。正社員として仕事をしたことがないので、仕事をしている自分がなかなかイメージできず、先輩社員をみてもトランスジェンダーの社員のロールモデルなど見当たらず、就活では試行錯誤で迷ってしまうケースも多いです。
Mさんもセクシュアリティ面も仕事そのものも不安を抱えてはいるものの、チャレンジしていきたい!と最後は話をしていました。
企業としてもこのような対応事例が非常に少なく、LGBTに関連する制度があっても風土面ではまだまだというようなことも多いです。
LGBT本人も企業も迷い手探りだからこそしっかりと話し合うという姿勢がなによりも大切だと感じています。