2021年もLGBTに関連する出来事やニュースがたくさんありました。その中でも企業のLGBT取り組みに関連が大きい出来事をピックアップして、2021年を振り返ります。

社会

  • 東京オリンピック開催
    「多様性と調和」をビジョンの一つに掲げた東京オリンピックが開催されました。コロナの影響も大きく開催自体にも賛否両論あり、また「多様性の尊重」という部分でも不十分な面もありました。一方で、セクシュアルマイノリティであることをカミングアウトして参加したアスリートは五輪史上最多となり、金メダルをいくつも獲得するなど、多くのセクシュアルマイノリティを勇気づけるシーンもありました。トランスジェンダー女性が女子種目に出場することでは、さまざまな考えの発言があり、多くの人に社会が抱える課題が見える化され考える機会になった大会でした。

国/自治体

  • パートナーシップ制度導入自治体の増加
    自治体の動きとしては、パートナーシップ制度の導入の拡大があげられます。パートナーシップ制度は2015年に渋谷区と世田谷区でスタートしました。その後、年々、導入自治体が増え、2021年には佐賀県、三重県といった県での導入もあり、2021年末時点で、約140の自治体が導入し、人口のカバー率では約40%まで増えております。東京都もパートナーシップ制度の導入を検討するという発表もありましたが、2022年には全人口の過半数がカバーされるまでに増えることが予想されています。
  • 与野党間で「LGBT法案」を審議
    LGBTに関連する法案としてLGBT差別禁止法やLGBT理解増進法が与野党間で審議されました。最終的にはLGBT理解増進法として与野党間では法案がまとまったものの、立法にはいたりませんでした。来年以降、LGBTに関する法整備が進んでいくことが期待されます。
  • 判例
    同性婚に関する訴訟に対して札幌地裁で「同性愛者が婚姻によって得られる法的効果を受けられないのは憲法14条に反する」という判決が出ました。全国で同種の裁判が行われており、今後高裁、最高裁へと係争は継続する見込みですが、同性婚に関する初の司法判断ということで注目を集めました。
    また経済産業省のトランスジェンダー女性のトイレ利用に関する裁判に関しては、高裁では一審の判決を覆し、トイレ制限は「不合理とは言えない」という判決が出ています。

海外編

  • バイデンアメリカ大統領の施策
    アメリカ大統領が、共和党のトランプさんから民主党のバイデンさんに代わりました。バイデン大統領は就任後、LGBTに関してさまざまな施策を打ち出しています。

    ・政府高官に初のトランスジェンダー当事者の任用
    ・トランスジェンダーの米軍入隊禁止の撤回
    ・パスポートの性別欄に男女以外に「X」という表記を選択可能に。

    アメリカの施策は大統領によっても大きく変わってきます。今回、LGBTなどマイノリティへの理解を示すバイデン大統領に代わったことで、アメリカのLGBT施策は進むことが予想されます。

 

2021年を振り返ってみました。2020年以上に、LGBTに関する社会な関心が高くなっていることが実感できるかと思います。

LGBTに関する企業の取り組みはどうあるべきか?というのはまだ社会的なコンセンサスは取れていない状況です。社会の理解度の深化とともに、企業に求められる内容も質も変わってきます。社会的の動きが急速であるからこそ、D&Iの観点からもコンプライアンスの観点からも企業の人事・ダイバーシティ担当者はLGBTに関する社会の動きにアンテナを張っておくことも大切になります。

2022年は多様な価値観や生き方が肯定される(否定されない)、そんな社会や企業がより増えていく一年になるのではないかなぁと考えています。