最近の研修でもらった質問の一部をご紹介します。
「LGBTQの人が気になること、嫌だと思うことを教えてください」
「お互いが気持ちよく一緒に生きていくために大切なルールを教えてください」
「言葉が問題ではないかもしれませんが、多くの人が気になるNGワードを教えてください」
「同僚からカミングアウトを受けた場合に、どのような配慮をすればいいでしょうか?」
「LGBTの知識がないため、不用意な発言で相手を傷つけてしまわないか心配です」
このような質問や相談をいただくケースがとても多いです。これらはいずれも、LGBT当事者との接し方に関するご質問です。LGBTといっても人それぞれ異なるので一概には言えませんが、それでもどういう接し方がいいのでしょうか?
LGBT当事者からは「特別視をしないでほしい」という声を多く聞きます。
具体的には「カミングアウトをしても、それまでと変わらずに接してほしい」とか「『AさんはAさんだからそのままでいいと思うよ』といわれてうれしい」ということも聞きます。
近しい人の中にLGBT当事者がいない(or気づいていない)という人にとっては、良くも悪くもつい特別な意識を持ちがちです。
僕自身も、以前は傷つけないようにしようと遠慮というか構えてしまう部分はありました。でも多くのLGBTの人と接する中で、LGBTとか関係なく気が合う人もいれば合わない人もいるし、明るい人もやさしい人も前向きな人も、いろいろそうでもない人もいることを感じます。
そうなると、LGBTってどんな人?って特別視をする意識はなくなり、結局、Aさんという個人と対面するようになります。
一方で、特にトランスジェンダーの人は、働く上で具体的な対応を希望する場合があります。戸籍とは異なる性別で区分されているトイレや更衣室の使用、戸籍名とは別の通称名の使用などの希望があります。これらは一見特別扱いに見えなくもないです。
ここで大切なのは、Aさん個人に対する対応と、特定の属性(要望)の人たちへの対応を分けて考えることです。
例えば、喫煙者のために喫煙所を社内に用意している企業は多くあります(最近は全面禁煙が増えていますが…)。この場合、煙草を吸うAさんを特別扱いをしているという意識はなく、喫煙者全体に対しての対応/取り組みになります。
喫煙者は一定数いて、その人たちが(制限はあっても)喫煙ができる環境を用意することで、当人たちも働きやすく、また生産性があがることで会社にもプラスになるという考えがあります。
これはセクシュアリティの話でも同じに考えることができます。
トランスジェンダーのAさんのために対応をすると考えるのではなく、通称名を希望する人にどのような対応をするかと考えるほうが、特別視という考えを整理するうえではわかりやすいです。
まだ社員からトランスジェンダーで自認の性別で働きたい!というような相談をもらうケースが少ないために、どうしても相談のあったAさんを特別に考えがちですが、Aさんから相談があるということは、他にも希望している人はいると考えて、そういう人向けにどのような対応をどこまで取るかを考えることが大切になります。
まとめると、LGBT当事者への適切な対応としては、個人としてのAさんへの対応は、基本的に特別視をしないということがいいと思います。またある属性や要望を持つ人たちに対しては、その人たちの働きやすさを考えた取り組みをするということになります。特別視というよりも、いろんな社員の働きやすさを考えるダイバーシティ&インクルージョンの一環として考えることが大切だと思います。