カミングアウトとは、自分の性的指向や性自認を自分の意志で他の人に伝えることを指します。カミングアウトといっても、状況や目的などによりさまざまに区分することが可能です。家族へのカミングアウト、友人へのカミングアウト、職場でのカミングアウトなどそれぞれ異なります。
今回は、その中でも職場でのカミングアウトについて整理してみました。

身近にLGBT当事者がいない人(いるかもしれませんが、気づいていない場合も含めて)の中には、職場でカミングアウトをする必要がないとか、カミングアウトをしないでほしいと考えている人もいます。
しかし、カミングアウトをするかどうかは、そもそも本人の意思で決められることであり、他人がカミングアウトをするorしないを強制することはできません。マジョリティの人も、無意識の会話の中で、自分が異性愛者であることやシスジェンダーであることを伝えていると思います。これと同じことなので、誰しも、強制されるべきではない、と考えられます。

またLGBT当事者の中にも、職場でカミングアウトをしたい、したくないというのもどちらもあります。セクシュアリティは仕事には直接関係ないから、カミングアウトの必要がない、という意見もあります。
このようにカミングアウトに関してさまざまな考えの方がいますが、では、実際には職場でどのようなカミングアウトがあるのでしょうか?具体的に職場であったカミングアウトの事例を紹介します。

  • 事例①
    職場で恋愛についてよく聞かれます。嘘をついたり隠したりするのも嫌なので、仲の良い同僚には自分のことを知ってもらうために、カミングアウトをしました。
  • 事例②
    レズビアンで結婚出産の意思も予定もないからこそ、老後のことも考えてしっかりとしたキャリアを築いていきたいと思い上司とのキャリア面談でカミングアウトをしました。
  • 事例③
    中途入社する際に緊急連絡先として、一緒に暮らしている同性のパートナーの名前を記載するために、人事担当者のみにカミングアウトをしました。
  • 事例④
    戸籍上は男性ですが、女性として働きたいという相談をするために、所属長にカミングアウトをしました。

このように職場でのカミングアウトは、相手との個人的関係においておきるものだけでなく、職場で働く上での必要性に迫られてカミングアウトをするケースも多々あります。

またカミングアウトとは、する、しないの二択ではなく、職場では基本的にカミングアウトをしていないけれど、AさんとBさんにだけはカミングアウトをしている、というような相手によって異なるという状況も一般的です。
また同じ職場でひろくオープンにしている人でも、新たに入社してくる人がいれば、その人に改めてカミングアウトをする、ということもあります。

LGBTの研修をしていると、カミングアウトを受けた場合にどういう対応をしたらよいのか知りたいという質問をいただくことがとても多いです。
実際には、上に見たようにさまざまなシチュエーションでカミングアウトがあるので、一概に正解を一つに定めることはできません。相手を傷つけず、適切な対応をしたいという場合には、まずは、LGBTの当事者がどのような状況で、どんな思いでカミングアウトをしているのかを知っておくことが、大切だと感じています。