LGBTの取り組みをすすめる企業は増えてきています。
会社説明会やインターンシップの場でこれらの取り組みをアピールすケースも多くあります。
一方で、LGBTの就活生にとって、「LGBTに理解のある会社」を企業選びの要素の一つと考える場合もあります。

しかし、「LGBTに理解のある会社」というのが具体的にはどんな会社なのかは、人によって考え方が違います。また、企業選びの要素は、「LGBTに理解のある」ということだけではありません。

今回は、インターンシップに参加しながら企業選びに悩むKさん(ゲイ)の体験談です。

 

大学3年生の夏、私はあるIT企業の5日間のインターンシップに参加しました。

その会社を知ったきっかけは、大学で開催された合同企業説明会でした。
事業内容そのものに興味があったことに加えて、採用ページに「多様な人材が活躍できる環境づくり」という言葉があり、LGBTに関する取り組みも紹介されていました。

私はゲイですが、就職活動では自分がLGBT当事者であることを積極的には話していませんでした。
カミングアウトをするつもりはなかったのですが、ただ企業を選ぶときには「LGBTに理解がある会社かどうか」は、かなり気になるポイントでした。

インターンでは、実際の社員の方と一緒にチームを組み、サービス改善について考えるグループワークを行いました。
社員の方は学生にも丁寧に接してくれましたし、質問もしやすい雰囲気でした。最終日には、人事の方との座談会もありました。

そのとき、人事の方から「就職先を選ぶとき、どんな会社で働きたいですか?」と質問されました。
私は少し考えてから「自分らしく働ける会社がいいです」と答えました。
すると人事の方が「それは例えば、どんな環境ですか?」と聞いてきました。
そこで私は初めて、自分が何を求めているのかを具体的に考えました。

もちろん、LGBTへの理解は大切です。
同性パートナーがいる社員への制度があることや、SOGIに関する研修が行われていることは、安心材料になります。
でも、それだけではありません。

私は仕事そのものにもやりがいを感じたいです。
興味のある仕事がしたいです。
上司や同僚と気持ちよく働きたいです。
給与や休日、働く場所や時間についても、自分の希望に合った会社を選びたいと思っています。

つまり「LGBTに理解のある会社だから入りたい」というわけではありません。

『LGBTであることを理由に、働きたい会社を選ぶことをあきらめなくていい会社がいい』

それが、自分の本当の気持ちなのだと気づきました。

インターンの帰り道、私はそのことを考えながら電車に乗っていました。
LGBT当事者にとって、企業のLGBT施策はもちろん重要です。
でも、当事者も一人の就活生です。
会社を選ぶときには、「どんな仕事ができるのか」「どんな人と働くのか」「成長できるのか」といった、他の学生と同じ視点で会社を見ています。
そのうえで「ここなら自分のセクシュアリティを必要以上に隠したり、説明したりしなくても働けそうだ」と思えること。
それが私にとっての「LGBTに理解のある会社」なのかもしれません。

企業がLGBT施策を発信するとき、「当事者に選ばれる会社」を目指すことは大切です。ただ、当事者が求めているのは、必ずしも「LGBTに特別に優しい会社」ではありません。

仕事を選ぶときは、一人の就活生として選びたい。そして安心して働くために、LGBTであることを理由に余計な負担を背負わなくていい。

インターンシップを通じて、私はそんな会社で働きたいのだと気づきました。

 

企業のLGBT施策は、当事者を特別扱いするためのものではありません。
誰もが自分の仕事やキャリアを軸に企業を選べる環境をつくるという視点こそ、採用におけるLGBT施策を考えるうえで重要なのではないでしょうか。