Q同性パートナーの看病と転勤拒否の有効性は?
Q性的指向は離婚原因となるか?
Q同性婚をした外国人パートナーの在留資格は?

LGBT当事者はどんなことに悩んでいるんですか?という質問を多くいただきます。仕事上だけでなく、生活全般にわたって、LGBTsに関連する悩み≒法律問題について、わかりやすくまとまっているのが『LGBTsの法律問題Q&A』です。

書籍概要

大阪弁護士会人権擁護委員会により出版された書籍です。

LGBTの法律問題を扱っている書籍はいくつかありますが、適度なボリュームであり、目次で興味を持ったQの個所を拾い読みすることもでき、読みやすくできあがっています。

内容としては、総論、カップル、子供・家族。医療・健康、労働・社会保障、社会という6つの章に分かれて、全部で45のテーマ(クエスチョン)からできています。

印象的なテーマ

印象的なテーマを一つだけとりあげてみます。

Q同性パートナーの看病と転勤拒否の有効性は?

男性従業員に遠方への転勤を内示したところ、「20年間連れ添った同性パートナーがいます。彼は病気を抱えて入院しており、私しか看病できないので、転勤はできません」

こんな要望はどう対処したらいいのでしょうか?

ここで大切なのは、婚姻関係にないor異性カップルでないからといって配慮しなくていいということではない、ということです。転勤に関しては配慮が必要ですし、転勤命令には限界があるので、このような条件であれば転勤命令の再検討をしたほうが良い、とのことです。

このように職場において法的な問題になる可能性のあるテーマもあれば、LGBT当事者が実際の生活でどんな不便や苦労があるのかを知れるテーマもたくさんあります。

感じたこと

弁護士が書いているので、法律的な見地がよくわかるのは当然として、取り上げている事例を見ていると数多くのLGBT当事者の生の相談を受けてきたであろうことが伺え、本書の内容がよりリアリティを感じさせるものとなっています。

2016年に出版されておりすでに約2年経過しています。この2年の間に、LGBTに対する社会の認識は大きく変わってきています。当然、裁判などにも影響してくると思います。

企業のコンプライアンスという観点だけでなく、よりLGBTを知るという意味で、実際にLGBT当事者から相談を受ける可能性がある立場の人は、一読もしくは手元に置いておくだけでも有用な書籍だと思います。