「ある少年の告白」

アメリカにおける実話です。同性愛者の性的指向を“治す”ための矯正治療の施設をテーマにした映画です。

原作者のガラルド・コンリーが実際に体験し、回顧録として「矯正治療(コンバージョン・セラピー)」での実態を告白しています。強制的に性的指向やジェンダー・アイデンティティを変更させようとする科学的根拠のないこの治療は、オバマ元大統領時代には禁止をしていこうという動きがありましたが、同性婚が認められるようになった2021年現在でも、多くの州で禁止されておりません。

アメリカはLGBTに関しての理解が日本より進んでいると言われることもよくありますが、このような矯正施設が存在していることも現実です。

矯正施設の実態や、同性愛者の苦悩などをよりリアルに感じられる映画です。

以下、ネタバレも含みます。

ストーリー

アメリカの田舎町。牧師の父と母のひとり息子として愛情を受けながら、輝くような青春を送ってきたジャレッド。しかし、”自分は男性のことが好きだ”と気づいたとき、両親に勧められたのは、同性愛を”治す”という危険な矯正セラピーへの参加だった。〈口外禁止〉だという驚くべきプログラム内容。自らを偽って生きることを強いる施設に疑問と憤りを感じ、ジャレッドは遂にある行動を起こす…。

テーマ

主人公のジャレッドの父は、キリスト教の一宗派の教会の牧師をしています。この宗派は同性愛を認めておらず、治療が必要という立場です。牧師として同性愛を到底容認できない父の想いを知っていると同時に、ジャレット自身も幼いころから教会に通っており、自分自身も自らの性的指向を認めることができずに、最終的には矯正施設への参加を自ら選びます。性的指向という自分で変えることができない自分自身のアイデンティティと感じつつも、一方で自分の正義(宗教)で認めることができないというのが大きな悲劇となります。

矯正施設の実態としては、精神医学的なアプローチはほぼありません。携帯電話などは取り上げられて朝から晩まで施設に缶詰めにされ、施設でのプログラム内容を外部(親であっても)に漏らすことは禁止されます。内容としては、男らしさを取り戻すために筋トレやバッティングをさせられたり、同性との性的な体験を自らの“罪”としてみんなの前で懺悔させられたりします。そしてこの治療は、同性愛が“治る”まで続きます。

この治療施設は、「同性愛は自分で選んでなるもの」「正しくないもの」という思想です。だからこそ、治療をすれば治ると考えています。施設の職員もみんな“治った人”たちなので実体験に基づいて、矯正をしていきます。

感想

本作品は実話です。そのため登場人物のその後というのが、映画のエンドロール直前に流れています。原作者の主人公は同性のパートナーと幸せに暮らしているとのことでしたが、実は矯正施設を主宰していた人物も現在は、同性のパートナーと暮らしているとのことでした。矯正施設で働いていたときは、自分を偽っていたのか、一種の洗脳をされていたのかはわかりませんが、同性愛者だからこその同性愛嫌悪という事例かもしれません。

また同性愛という視点ではなく、正義(価値観)という視点でも考えさせられます。性的指向に限らず自分の正義(価値観)を絶対視し、それをもって他人を評価しようとすると、相互理解が得にくくなります。ダイバーシティというのは“違い”です。違いを認め合うことの大切さを改めて感じる作品です。

母親の葛藤、牧師としてではなく父としての悩みなども描写されており、ヒューマンドラマや家族愛などの観点からも興味深い映画となっているのでお勧めです。