契約企業の概要

上場している金融機関。女性活躍や障害者雇用をはじめとしてダイバーシティ&インクルージョンには注力をしており、LGBTに関しても研修やeラーニングを実施している。社内でカミングアウトをして働いている当事者はほぼいないものの、LGBT専用の相談窓口を外部に設置をしている。

相談内容

毎年、LGBTに関しても全社員がeラーニングを実施しています。このeラーニングが終わったタイミングで、企業の人事担当者から当社の相談窓口に相談がありました。相談内容としては、社内のAさん(40代管理職)から、カミングアウトについて質問があったので、詳しい事例なども踏まえて対応をお願いしたいとのことでした。

その後Aさんからメールにて相談がありました。

『LGBTに関してですが、eラーニングなども受けたのでカミングアウトを強制してはいけないと勉強はしたのですが、そんなに隠さないといけないのでしょうか?私は全然気にしませんし、現実的にはある程度、自分をさらけ出してもらわないと、なかなかチームワークも築きにくいというのもあります。ご本人たちが意識をしすぎているというのは言い過ぎでしょうか?』

何度かメールでやり取りをしたところ、Aさんは身の回りで親しいLGBTのかたはいませんが、関心をもって勉強をしようとしていました。いろんな人がいるのは当たり前だし、それが仕事に影響するわけでもないからこそ、その気持ちがよくわからないとのことでの相談でした。

弊社の外部相談窓口対応

Aさんの場合は、身近にLGBTの方がいなく、なかなか具体的な話を聞く機会がなかったとのことでした。改めてなぜカミングアウトをしたくないと考えるLGBT当事者がいるかということをお伝えしました。カミングアウトをしたくない理由としては、差別を受けたり嘲笑されたりするのが嫌という人もいれば、自分の性的指向などをわざわざいう必要がない(言いたくない)という考えの人もいます。

差別というのも露骨なハラスメントもあれば、マイクロアグレッションと呼ばれるような日常的に行われる小さな差別の積み重ねもあります。

また職場という環境や人間関係の中で、異性愛とか同性愛とかに関係なく恋愛話をしたくないしする必要がないという考えもあります。

これらのことを、メールでお伝えしたうえで、実際に当社のゲイの当事者(Bさん)と電話でお話をしていただき、リアルな考えとしてお伝えをさせていただきました。

このときAさんにお伝えしたのは、まずは当事者としてのBさんの気持ちを伝えました。Bさんは職場でのカミングアウトに関しては、どちらでもよいという考えです。性的指向に関しては、職場の同僚に是非、知ってほしいということもなく、一方で、絶対に隠したいというわけでもないという考えです。場合によってはカミングアウトをしてもOKというスタンスで、このような考えの当事者も少なくないです。自分自身のアイデンティティという意味では、性的指向は確かにその一つではあるものの、自分のアイデンティティはほかにもいろいろあるので、性的指向以外で自分を知ってもらい人間関係は築けるという考えです。

またBさんはゲイコミュニティでよく聞く他のゲイのかたの話もお伝えしました。特に性的指向がバレて、陰口を言われたり嘲笑される例は多くあり、具体的なお話をしました。

最終的には、Aさんは自分の想像が及ばなかった点があったことに気づき、カミングアウトを強制しないということの大切さを納得されていました。

 

このようにセクシュアリティで差別などをしない人の中には、カミングアウトをできない(したくない)という気持ちがなかなかわからないというケースがしばしばあります。具体的な例や、当事者の話を聞くことでより理解が深まったケースです。