トランスジェンダーの就活生は、LGBTフレンドリーを掲げている企業や、説明会や面接時の服装自由という企業から就職先選びをするというケースもよく耳にします。
今回は、現在、大学4年生で就職活動真っ最中のFTMトランスジェンダーのSさんのお話しです。就活にあたって大学のキャリアセンターとの関係、カミングアウトの考え方などお話をしていただきました。
私は現在、4年生のFTMトランスジェンダーです。トランスジェンダーですがホルモン治療などはまだ行っていません。ただ男性として働きたいと思っています。
私の大学では3年生の5月に全員がキャリアセンターの方と面談をしています。私も昨年面談をしました。その際に、私はFTMトランスジェンダーで男性として働きたいという相談をしました。初めてお会いした人にいきなりカミングアウトをするのはかなり緊張をしました。
その面談の場で、男性として働きたいという希望を伝えたところ、「もったいない」と言われてしまいました。私の就活を思って助言してくれたのだとは思うのですが、それがショックで1年ほどキャリアセンターを避けてしまいました。その後、ゼミの先生を通じて、別のキャリアセンターの担当の方とお話し、その方は、私のことを理解しようとしてくれて、親身に応援してくれていて、今はとても勇気づけられています。
キャリアセンターのかたも相談して大丈夫という発信をしてもらえると、より安心できる気がします。
また周囲にもあまりカミングアウトをしていなかったので、応募企業にカミングアウトをするのも怖い気持ちがあり、なかなか説明会などに参加できませんでした。ただ勇気を振り絞って参加した説明会で人事の方が「他者への想像性」が大切という話をしてくださり、とても響きました。目線をしっかりあわせて話をしてくれて、私もちゃんと向き合いたいと思って初めてカミングアウトをしました。他の就活生もいたので驚いたと思います。
そのあとは、あらためて考えてみて、自分は相手にも自分にも嘘をつきたくない、と思って、できるだけカミングアウトをする機会を見つけてカミングアウトをするようにしています。ES(エントリーシート)の追記欄や説明会のアンケートの備考欄などにもできるだけ書くようにしています。
就活をしていて、私は「人」が大切だと感じて、それを軸に企業選びをしています。セクシュアリティに関しても制度が整っているかどうかより、その制度を作るのは人なので、どんな人がいてどんな人と一緒に働けるかを一番大事に応募しています。だからこそ自分のこともしっかり伝えるようにしています。
就活の中で、カミングアウトをした際に、人事のかたから「私は全然気にしないけど、社内にはトランスジェンダーをリスクと感じる人もいるかもしれない」と言われたときは、グサッと来ましたが、早めに教えてもらえて逆にラッキーと思うように、気持ちを切り替えました。
セクシュアリティに関しては、それを軸に就活をしているわけではないですが、カミングアウトをしているので、どのような取り組みをしているかなど面接の場で教えてもらえると嬉しいです。
Sさんとは4年生になってから3回ほどお話をしました。その間にも就活で企業の説明会や面接を経験し、その過程で自分のセクシュアリティに関しての考えや希望なども整理され、固まってきているように感じました。
Sさんがこのあと、どのように就活を進めて、どんなところに就職するのか、次に話を聞けるのが楽しみです。