就活や転職時の面接でカミングアウトは、タイミングも伝え方も難しいケースが多いです。緊張しながらカミングアウトをしたところ、嫌な思いをしたという体験をもっているLGBT当事者は少なくないです。一方で、面接官にとても良い対応をしてもらえて、それが入社の決め手となる場合もあります。

今回は、面接時にとても良い対応をしてもらったという、トランスジェンダーのMさんの就職時の体験談をご紹介します。

私は、今、27歳のFTMトランジェンダーです。治療に関しては、ホルモンは大学卒業時に開始したので、もう4年ほどになります。まだ手術はしていませんが、声は低くなっていて、見た目は男性に見られることが多いです。

大学を卒業後、営業の仕事を4年していましたが、もっと給与を上げたいというのと男性として働きたいという気持ちが増してきたので、思い切って転職をすることにしました。前職の仕事内容は法人の新規営業です。前職の入社時はホルモンも始めたばかりだったのもあって、女性として入社しています。働きながらの移行は周囲との関係的にもなかなか難しいと感じていました。法人営業なのでそれなりにカチッとした服装が求められたのですが、スカートはどうしてもいやだったので、レディースのなかでもなるべく中性的な印象の服装を選んでいました。髪も短くして、背も168cmあるので、途中から男性に間違えられることもときどきありました。

転職にあたっては仕事内容と給与、それから男性として働けるという条件にこだわりました。仕事内容や給与などは求人票をみればすぐにわかるのですが、男性として働けるか?トランスジェンダーをちゃんと受け入れてもらえるかは、求人票にも会社HPにも書いていないので、そこは探すというよりは、応募して実際の面接の場で相談するという形をとりました。

実際の転職の場面では、履歴書には性別を記載せずに、メンススーツにネクタイをつけた写真で応募をしました。ただ私は女子大を卒業しているので、そこは隠しようがなかったです。面接の場では、面接官から「あれ、女性、だよね??」と聞かれたり、「なんでネクタイをしているんですか?」と言われたりしました。面接の場でちゃんとカミングアウトをして相談しようと決めて臨んでいたのですが、先に、そういうことを言われるとなかなか言うのが難しかったです。

そのなかで、今の会社では、面接にはメンズスーツ&ネクタイで行ったのですが、その場では特に何も言われず、面接終了後に、若い男性の人事担当者から、面談をしたいので少し残ってほしいと言われました。「ここからは、面接ではなく、働き方について相互の理解を深めたいので、緊張しなくていいので率直にお話がしたいです」と言われました。

面談では、直接的にセクシュアリティについて聞かれたわけではないのですが、メンズスーツを着ていることについて、何か働き方での希望や相談はありますか?ということを聞かれました。面接時に何も言われなくて、カミングアウトのタイミングも失っていたのですが、このような場を作ってもらえたので、すんなりと相談ができました。

あとで聞いたら、履歴書をみたときに、トランスジェンダーかはわからないけれど、何か相談があるかもしれないと思い、このような場を設けていただいたということでした。

やはり、セクシュアリティの部分は私にとってとても大切な要素だったので、このような気遣いをしていただけるというだけで、とても嬉しかったし、最終的にこの企業で働こうという決め手になりました。

Mさんは、その後、男性の営業職として元気に働いています。メンズスーツ&ネクタイという格好もあり、仕事上では女性と思われることはほぼないそうです。職場でも周りの同僚には特にカミングアウトをせずに働いているとのことです。

自分らしく働ける、ということだけで、仕事もとても楽しいです!とMさんはおっしゃっていました。