契約企業の概要

全国展開をしているS社。LGBTの取り組みとしては、従業員向けのeラーニング、役員向け研修、管理職向け研修、パートナーシップ制度、トランスジェンダー向けの性別適合手術で使用できる休暇制度、社内外の相談窓口などを実施しています。

相談内容

今回のご相談は、役員のYさん(50代。ゲイ)です。

Yさんから最初にきたメールには、『お話を聞いていただきたいことがありますが、個人情報は守られますか?』というものでした。

社外の相談窓口であっても、個人情報が守られるかを心配する方は少なからずいらっしゃいます。
Yさんの場合には、具体的な相談内容が分からなかったので、まずはYさんの同意がなければS社に対してYさんの個人情報の提供をしない旨をご説明したうえで、さらに共有する情報の範囲やフローについても具体的にご説明しました。

このようなメールのやり取りを経て(Yさんのメールは会社のメールではなく、gmailでした)、直接、電話で話をしたいとのことでしたので、時間を調整して、電話で話すことにしました。
電話に関しても、ご自分の電話番号を知られることには抵抗があるとのことで、非通知で弊社の電話番号までかけていただきました。

以下、電話でお話した内容です。

Yさんは永年S社グループで働いてきて、現在は、役員のポジションにあります。セクシュアリティはゲイですが、会社には一切カミングアウトをしていないそうです。

今回は相談というより、話を聞いてほしいとのことでした。

Yさんは、これまで30年間S社グループで働いてきた中で、社内でも同性愛に対する嘲笑や差別発言を何度も耳にしただけでなく、結婚をしていないことに関しても出世に影響があるというようなことを何度も言われてきたそうです。

それがこの数年で社会が大きく変わり、“考え方が化石みたいな会社”(Yさんの表現)がLGBTに関して取り組みを始めたことは、驚きでもあり、嬉しくもあり、戸惑いもあるということでした。

電話口では、これまでのさまざまな想いが溢れ、感極まる部分もありました。

プライベートでは、10年以上一緒に暮らしているパートナーがいて、ご両親にも話して理解してもらっています。
ただパートナーシップ制度については、利用する気持ちはないとのことでした。
S社のパートナーシップ制度を利用した場合でも、人事部の一部の担当者だけにしか情報は共有されないのですが、Yさんとしては自分自身の立場を考えると、人事担当役員が知ること自体、避けたいということです。

今の会社に対しては、取り組みを始めてもすぐに変わることはないと思うけれど、声を上げていない当事者はたくさんいるから、取り組みを継続し、深化していってほしい、とのことでした。

今回ご相談いただいたのは数か月前に実施した役員向け研修がきっかけだそうです。
その役員研修をYさんも受けながら、「周りの役員はこの中に当事者がいると思っていないんだろうなー」と思い、“ここにいるよ!”という気持ちも込めてのご相談だったそうです。

弊社の外部相談窓口対応

今回のご相談は特に解決を求めるものではなかったので、相談内容の概要をS社の人事ダイバーシティ推進室には報告をいたしました。

Yさんは、“役員”であることを人事に伝えることに不安を感じていましたが、一方で、役員の中にもいる、ということを知ってほしいという気持ちもありました。
S社はグループ全体では役員も100名以上いるので、役員というだけでは本人の特定は難しいということで、最終的には役員からの相談ということまでS社には報告しました。

S社の人事部長は、会社としてすぐに何か対応をすることはないけれど、本当に身近にいるということを念頭に取り組みを今後も継続していきたい!と話されていました。

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