職場でカミングアウトをして働いているLGBT当事者は数%だといわれています。
カミングアウトをするかどうかは本人次第なのですが、カミングアウトをした場合にどのような反応が返ってくるかは、相手によって違うのでとても気になるところです。

今回は、最近、職場でカミングアウトをして、嬉しかった体験とやや戸惑った体験をしたというHさん(ゲイ)のお話をご紹介します。

私は今の会社で働いて5年になります。年齢は30代の前半です。
10代から20代の頃は、自分のゲイというセクシュアリティを自分自身でも受け止め切れていない部分があって、できるだけ隠して暮らしていました。

30歳を過ぎたときに、ゲイの友人(Aさん)ができました。
Aさんとは別の会社なのですが、Aさんは自分の職場で自分がゲイであることをオープンにしていました。
Aさんの話によると、自身がゲイであることを隠すことなく、話の流れで同僚にもカミングアウトしているみたいでした。
実際にカミングアウトをすると、いろんな反応はあるけれど、気分的には隠し事をしているよりは働きやすいといっていたのが印象に残りました。

Aさんの話をきいたのと同じ時期に、私の会社でもLGBTについて研修やeラーニングを始めたり、福利厚生制度が改訂されたりしました。
私自身の中でも、少しずつ考えが変化してきて、自分を受け入れて自分らしく生きるためにも、カミングアウトをしていきたいと思うようになりました。
考えが変化してきたのは年齢を重ねてきたのもあるかもしれません。

職場で初めてカミングアウトをした相手は、2個上の先輩です。
二人で食事に行く機会があり、そこでLGBT研修の話題から、『LGBTとかどう思いますか?』という感じで話を振ってみました。
すっごい緊張していたのですが、できるだけそれを抑えて顔に出ないようにして聞いてみました。
その話を切り出したときの雰囲気と、それまでの先輩の言動から、そのまま言えそうな感じだったので、『実は、私も・・・』という感じでカミングアウトしました。
そのときの先輩は、『あ、そうなんだ』という感じの反応で、いい意味で軽く受け止めてくれたのがとても嬉しかったです。
カミングアウト自体は、私にとってはとても大きな出来事だったのですが、先輩の反応をみて、そんなに気にしなくていいんだ、という気持ちになれました。

そのあと、少しずつ機会をみて他の人にもカミングアウトをしています。
ひどい反応をされたことはないのですが、ある人にカミングアウトをしたときに『話してくれてありがとう。これまで大変だったでしょ、応援するからなんでも相談してね!』と言われたことがあります。
完全に善意で言ってもらっているのはわかるのでとてもありがたいのですが、どこかモヤモヤする気持ちも同時にありました。
仕事上で何か具体的に困っている人にとっては、“応援する”というのはとても心強く感じるかもしれません。
ただ私の場合は、そこまで特別何かに困っているわけではなかったので、軽い受け止めのほうが気が楽になれたのかもしれません。

どちらにしても、職場の人(数人ですが)にカミングアウトができたことは、私の中では気持ち的にずいぶん楽になりました。

カミングアウトに対して、どのような反応や対応がその当事者にとって望ましいかは、本当に人それぞれです。
セクシュアリティによる違いもありますが、自分のセクシュアリティをどう自分自身が受け止めているかという自己受容の状況も関係しているかと思います。

『カミングアウトを受けた場合にどのような対応が望ましいか?』というのは最もよくある質問の一つですが、これは正解が一つに決まっているわけではないので、いろいろな当事者の考えをきき、それぞれの違いを感じることで、向き合い方を考えると良いと思います。