職場での働きにくさにはさまざまなものがあります。
働きにくさがないのが一番いいのですが、それを完全に実現することは難しいです。
人によって働きにくさも違うという状況の中で、大切なのは自分の働きにくさをちゃんと相談できるかどうかということです。
今回は、働きにくさをなかなか相談できず悩んでいるTさん(ゲイ)の体験談です。
私は、27歳でオフィス用品の営業職をしています。
新卒で入社して4年目になります。
仕事自体は大変な部分はもちろんあるのですが、それでもある程度、自分一人でできることも増えて、営業の面白さを感じられるときも増えてきました。
職場のマネージャーもメンバーも良い人が多くて、基本的にはやりやすいです。ただ、一人だけ苦手な先輩がいるのが、今の悩みです。
その先輩は、社交的で面白い人で、“ザ・営業!”という感じで営業成績もチームでトップです。
けれど、ノリが良すぎるというか、しつこく絡んでくるときがあって、ちょっと困っています。私のセクシュアリティはゲイですが、社内ではだれにもカミングアウトをしていません。
ただ少し話し方が、おとなしい部分があって、その先輩からは、
「男だろ、もっとはっきりしゃべれよ!」
「お前、ゲイっぽいよな。まあ、別にゲイでもどっちでもいいんだけど」
というようなことを何度か言われたことがあります。
先輩としては、差別意識はないと思うのですが、半分指導、半分からかいという感じで絡んできます。その先輩は、他の後輩にもからかうような発言はよくしているので、自分だけが気にし過ぎなのかもしれないと思って我慢してきたのですが、やはり耐えられず、あるときマネージャーに相談をしてみました。
もちろん自分のセクシュアリティをカミングアウトすることはせずに、先輩のからかいがしつこくて困っているということを伝えました。
しかし、マネージャーからは「自分からも注意はしておくよ。ただあれがあいつのコミュニケーションの取り方だから、Tさんのほうもうまく聞き流して」と言われてしまいました。
私の伝え方が悪かったのか、あまり真剣には捉えてもらえなかったのかもしれません。うちの会社は、LGBTの研修とかは一応やっているし、ハラスメントの相談窓口もあります。ただ、カミングアウトにつながると思うと、ハラスメント相談窓口に相談することも難しいです。
仕事面、人間関係、給与なども不満はないのですが、その先輩の絡みは面倒で、最近は“退職”の2文字もちょっと考えてしまいます。
ハラスメントの被害者はどんな場合も相談しにくいというのが一般的ですが、特にLGBT当事者にとっては、相談=カミングアウトとなるケースが多いので、より相談ができないという悩みが多いです。
この先輩はゲイに偏見はあるかもしれないけれど、差別意識というわけでもなさそうなので、ちゃんと話をすれば分かってくれるかもしれないという気持ちは、Tさんにもあるそうです。
ただ、そうじゃなかったときに一気に居場所がなくなるので、怖くて話せないと悩んでいました。
職場に10人のメンバーがいるとして、一人でも理解のない人がいると働きにくさを感じる一方で、一人でも理解してくれる人がいれば、それだけで安心感をもって働きやすくなるという場合もあります。
Tさんは、もう少し頑張ってみて、もし退職を決意する場合にはその前にもう一度、マネージャーにカミングアウトをして相談してみようと思います、と話してくれました。