LGBTをテーマにしたテレビ番組、ドラマ、映画などが最近は増えてきています。そんな中で、演劇の世界でもLGBTをテーマにしたものが上演されています。
『パンセクシュアル』
カミナリフラッシュバックスという演劇ユニットが先月、東京で上演をしました。内容はレズビアンが共同生活をする雑居ビルを舞台に『LGBT』をテーマにしています。LGBTについての知識がない人でもついていけるように、『LGBTって何?』っていう役柄を上手に混ぜ、語句の説明やLGBTをよく知らない人のよくある反応などを描いており、そのあたりはLGBT入門研修のようでもあります。
この舞台の珍しいのは、LGBTの中でもパンセクシュアルに焦点を当てていることです。パンセクシュアルとは全性愛者ともいわれますが、性別にこだわらずすべての人が恋愛対象となる人を言います。バイセクシュアルによく似ていますが、バイセクシャルは男性女性のどちらも恋愛対象とするということなので、ある意味、男女二元論で考えているという点でパンセクシュアルとは大きく異なるとも言えます(ここら辺は、言葉の使い方、本人の感じ方の部分もあり、明確な線引きは難しいです)。
演出家のニシオカ・ト・ニールが『日当たりの悪い所でも力強く生きる人々に焦点を当てた、エネルギッシュで、エキセントリックな会話劇』にこだわっているという通り、一人一人の役柄に生きている力強さを感じます。またクスッと笑える場面や泣ける場面が随所にちりばめられており、LGBTの勉強なんて考えずに、ひとつのエンターテイメントとして楽しめます。
この舞台をみたパンセクシュアルの当事者は、LGBTの中でもマイノリティのパンセクシュアルの気持ちをよく捉えているので、共感できた、と言っていました。
『ここにいるよ』
演劇集団LGBTI東京が演じる高校生のLGBTをテーマにした舞台です。女の子を好きになった女子高生が、SNSなどで多くのLGBT当事者と出会い、自分の中で否定してきた自分の感情を認めていくストーリーです。
高校生の教科書にLGBTが取り上げられるようになりましたが、実際の教育現場では先生は何をおしえたらいいのか?実際に生徒からカミングアウトや相談を受けたらどう対応していいのかわからないという声があります。
LGBT当事者の中学生や高校生なども迷い、悩み、自分自身を隠しています。そんな中高生がこの舞台をみれば、きっと迷いや悩みを考えるヒントが得られ、自信を持てるようになるのではないでしょうか?
セクシュアリティが全体的なテーマではありますが、そもそも多感で悩みの多い高校生が自分を受け入れて認めていく話でもあります。
LGBTをテーマにした話はいろいろありますが、LGBT非当事者も変に構えたり緊張することもなく、自然に舞台に入っていけると思います。
そんなリアルな感じがとても良いです。
この公演は、学校での公演を目指しているそうです。クラスに3人はいると計算されるLGBTの中高生。まだ学校現場では身近にいないものとされやすいので、学校教育や人権問題の講義に活用したいとのことです。
ほとんど全員がLGBT当事者というだけあって、セリフ一つに一つに心がこもっており、その意味でも“リアル”を感じました。
舞台には、テレビドラマや映画にはない、別の良さがあります。今回ご紹介した2つの舞台は、小劇場ならではの迫力があります。
演劇集団LGBTI東京は、12月13日から次回公演『にじいろ幼稚園のクリスマス』というのが決まっています。お時間があるかたはご覧になってみてはいかがでしょうか?