近年、企業のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)推進が重要視される中で、「ホモソーシャル」という概念が職場環境に与える影響についても注目されています。
ホモソーシャルとは、同質的な人々が集まり、互いに結びつきを強める社会的傾向を指します。
日本の企業文化では、特に男性中心のホモソーシャルな関係が根強く、多様な人の働きにくさだけでなく、組織の意思決定や人材の登用に影響を与えることがあります。
今回は、ホモソーシャルとは何か?職場にどのような影響を与えるのか?について考えていきます。

ホモソーシャルとは、同性同士の社会的なつながりのことを指します。
特に男性同士の連帯感の強いコミュニティや価値観を指すことが多いです。
ざっくりとした言い方をすれば、「男社会」「体育会系」といわれるようなコミュニティのことです。

このようなコミュニティには次のような特徴があります。

  • 仲間意識
  • 上下関係(年功序列)
  • 男らしさ、強さの美徳
  • 非公式なネットワーク(飲み会、ゴルフ、喫煙所など)の重視
  • 暗黙のルール(言わなくてもわかることが重要)
  • 共通の体験による結束(残業、休日出勤、厳しいノルマ達成など)

仲間になることで、上司に気に入られやすい、さまざまな情報がはいる、自分の居場所を確保するという安心感など、昇進なども含めた有形無形のメリットを得られることもあります。

「男社会」なので、当然、女性はこの社会にはいることは非常に難しいです。
また男らしさの特徴の一つとして、異性愛を前提とした女性へのスタンスの強要があるため、ゲイ(同性愛男性)は、仲間になるのは難しいですし、カミングアウトをせずに仲間で居続けることはストレスにつながることが多いです。

ではゲイの社員はどんな場面で働きにくさを感じるでしょうか?
事例をご紹介します。

  • 職場の先輩がしょっちゅう「彼女いるの?」「彼女早く作れよ」「紹介しようか」など異性愛前提の恋愛の話をしてきます。ランチや車での移動中とかにも話してくるのがうっとおしいです。
  • うちの職場は、「あいつはコッチか?」「彼女はいないけどゲイではありません!!」「ホモはちょっとね…」など同性愛を笑いものにする発言がいまだに多くあります。これはだれか一人の発言じゃなくて、職場全体でそんな雰囲気があり、こういう発言にみんな笑っています。
  • 普段は職場では真面目なんですが、仕事終わりの飲み会などでお酒が入ると下ネタばかりいう先輩がいます。下ネタが面白いと思っているのか、自分の自慢話なのかうんざりします。一応、笑顔で聞いているふりをしていますが。
  • 職場の後輩の中にキャバクラが好きな人がいて、それは個人の勝手なので良いのですが、一緒に行きましょう!としつこくて迷惑しています。他の先輩の中には一緒に行く人もいるので、私にも何度もいってきます。
  • 私は、肩につくくらいの長髪なのですが、「男なら短く切れ」「自分はうっとおしくないの?見てる方がうっとおしいけど」など言ってくる上司がいます。仕事に関係ないし、放っていておいてほしいです。

いかがでしょうか?

今はこのような会話がされる職場はオフィシャルな場では少ないと思いますが、休憩時間や就業後ではまだまだ多くあると思います。
特に女性がいない場面ではこのような言動が目立つという傾向もあります。

「昭和的」と言われる価値観や風土があります。ホモソーシャルな職場というのは「昭和的」と密接に関係があります。
またホモソーシャルな職場では、男性同性愛者(ゲイ)だけでなく、男性異性愛者も似たような働きにくさを感じるケースは少なくないですし、もちろん女性は別の事例も含めてもっと働きにくさを感じると思います。

今回は男性同士のホモソーシャルについて考えてみましたが、女性同士のホモソーシャルな職場というのもあり、そこには別の働きにくさがあります。
※日本企業は男性優位な社会なので男性同士のホモソーシャルな職場のほうが問題になりやすいです。

ホモソーシャルという観点で、職場を見直してみてはいかがでしょうか?