契約企業の概要

今回ご相談いただいたのは、世界中に拠点を持つ外資系のテクノロジー企業。
日本法人ではダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を経営戦略の一部に位置づけており、LGBTを含むさまざまなマイノリティの社員を支援する制度や社内研修も充実しています。
社内には、研修や福利厚生制度は数年前から実施・導入されており、また性の多様性に関するアライ(支援者)を可視化する取り組みや、当事者が参加できる社内コミュニティ(ERG)も存在しています。
また、社員の中には、特に外国籍社員を中心に、自らのセクシュアリティを公にして働いている人もおり、全体として“開かれた雰囲気”があるといえます。

その一方で、個々の社員の価値観や理解度にはばらつきがあり、日常のちょっとした言葉や態度に対して、当事者がモヤモヤした気持ちを抱えるケースもあるようです。
そうした背景から、従業員の声を丁寧に受け止めるために、当社が提供する外部相談窓口サービスを導入していただいています。

 

相談内容

相談者は、30代前半のゲイの男性社員。
入社8年目を迎え、これまで社内では自身のセクシュアリティについては公表せずに働いてきました。
一部の外国籍の同僚がゲイであることをオープンにしている姿には敬意を抱きつつも、「自分にはまだ難しい」と感じているといいます。
特に問題が起きているわけではありませんが、ある日、職場の雑談の中でふと耳にした言葉が、心に引っかかったと話します。

「“LGBTばっかり優遇されてて、逆差別じゃない?”って言ってる人がいて。別に自分のことを言われたわけじゃないのに、ものすごく心がざわついたんです」
「直接的に攻撃されたわけではなく、むしろ“ただの会話”だったかもしれないのですが、自分の正体を知られていたらどう思われていたんだろう、自分がその場にいることで誰かに気を使わせてしまうのではないか、そんな思いが頭をよぎりました。」

さらに、ご相談者はアメリカのニュースに触れる中で、トランプ大統領のLGBT政策に関連する言動にも不安を感じていました。
「うちの本社はアメリカなので、仮に向こうのD&I方針が変わったら、日本にも影響があるんじゃないかと…心配になるんです」

社内で“開かれている”とされる雰囲気と、自分の気持ちとのギャップを感じ、表には出てこないけれど、静かな緊張感や不安を抱えたまま働き続けることのしんどさなどが混ざり合って、今回の外部相談窓口の利用へとつながりました。

 

弊社の外部相談窓口対応

相談対応ではまず、相談者が感じた“不安”や“モヤモヤ”に寄り添うことから始めました。
「逆差別」という言葉は、直接自分に向けられたものでないとはいえ、職場に存在する“無意識の偏見”を垣間見たようで、心が揺らいだという気持ちは非常に理解できるものです。
カミングアウトしていない立場であっても、自分に関係する発言が耳に入ることは多く、その度に「何も言えない」「何かあったときに守られるのか」といった疑念が生まれてしまいます。
そこで、相談者が安心して思いを吐き出せるよう、言葉を選びながら傾聴を重ねました。

また、アメリカの政局が企業の方針に影響を与える可能性についての懸念にも、事実ベースで丁寧にお答えしました。
現時点では、本社を含めたグループ全体としてのD&I方針は堅持されており、日本法人においても独自の方針と施策を継続中であることを確認し、必要以上に悲観的になることなく、現状を正しく把握できるようサポートしました。

加えて、弊社が提供する外部相談窓口は、こうした「ちょっとしたひっかかり」「大ごとではないけれど不安」というテーマにも対応可能であることを再確認していただきました。
社内では言いづらいことや、周囲との関係性に影響を与えたくないという理由で内に秘めてしまいがちな思いも、外部という第三者性があることで、安心して話すことができる――その体験が、相談者の心の整理にもつながったようでした。

相談後には、後日以下のようなコメントをいただいています:
「あの時のざわつきが、ちゃんとした“気持ち”として認めてもらえたのがうれしかったです」
「外部相談窓口って“トラブルがあった時に使うもの”だと思ってたけど、こんな使い方もできるんですね」

今回の事例は、“目立った問題が起きていない状態”だからこそ、見落とされやすい課題でした。
表面的には多様性が尊重されている職場でも、少数派の側には言葉にできない緊張や不安が蓄積していることがあります。
制度や風土が整っている企業であっても、「個人が安心して働き続けられること」とは別の場合があるからこそ、外部相談窓口の存在が重要になります。
誰にも話せないけれど、誰かに聞いてほしい。そんな時に、利害関係のない第三者が安全に話を受け止めてくれる。その安心感が、従業員一人ひとりの「働きやすさ」を支える土台になります。

今後も私たちは、相談者の背景や状況に応じた丁寧な対応を通じて、外部相談窓口としての役割を果たしていきたいと考えています。

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