毎年開催されるTokyo Prideは、いまや多くの企業が参加する大規模イベントとなりました。
レインボーカラーのロゴを掲げる企業、社員によるパレード参加、会場内の企業ブースなどを目にする機会も増えています。
一方で、「PRIDEの商業化」という言葉が語られる場面も少なくありません。
「企業広告のようになっている」「本来の社会運動から離れているのではないか」といった意見もあり、企業の関わり方について議論になることもあります。

しかし、PRIDEの歴史や現在の役割を考えると、企業の参加には単なる宣伝ではない意味があります。

今回は「なぜ企業がPRIDEに関わるのか?」Tokyo Prideと企業の関係を考えてみます。

 

PRIDEパレードの起源として知られているのが、1969年にアメリカ・ニューヨークで起きた「ストーンウォールの反乱」です。
セクシュアルマイノリティの人たちが集まるバー「ストーンウォール・イン」に対して警察の踏み込みが行われ、それに抵抗した当事者たちの行動が、後のLGBT権利運動につながっていきました。
当時は、同性愛が強い差別や偏見の対象となっていた時代です。
職場で解雇される、住居を断られる、家族との関係が壊れるなど、日常生活の中で多くの困難がありました。
そのような中で、「誇りを持って生きよう」という意味を込めて、“PRIDE”という言葉が広がっていきました。
つまり、PRIDEはもともと、存在を否定されてきた人たちによる社会運動だったのです。

 日本では1994年に「東京レズビアン&ゲイパレード」が開催され、その後、現在の「Tokyo Pride」へとつながっていきました。
10年位前から、LGBTに関する企業の取り組み(研修や同性パートナーシップ制度など)も少しずつ広がっていき、それに伴ってPRIDEイベントへの協賛も広がってきました。

 

企業がTokyo Prideに参加する意義や目的は何でしょうか?
一つは企業のLGBTに関する取り組みを外部に向けて発信する場という意義があります。
これにより社内のLGBT当事者も、自社の取り組みや姿勢を知ることができ働きやすさにつながる側面はあります。
ただし、この発信が行き過ぎた場合には、実態を伴わないPRIDE協賛として“レインボーウォッシュ”という批判が向けられることがあります。「本当は社内環境が整っていないのに、イメージ向上のためだけにLGBTを利用しているように見える」という考えです。
これは、一つの企業への批判だけでなく、Tokyo Pride全体の「商業化」への懸念にもつながっています。
実際に当事者コミュニティの中には「スポンサー企業が目立ちすぎて、当事者の声が見えにくくなっている」と感じる人も少なくないです。
PRIDEが本来、権利や尊厳に関わる社会運動だったからこそ、その歴史とのギャップに違和感を覚える人がいるのです。

企業がTokyo Prideに協賛する重要な目的(効果)としては、抽象的だった「ダイバーシティ」を具体的に感じられるということも挙げられます。
ダイバーシティ推進という言葉は広く使われていますが、「実際に誰のことなのか」が見えにくい場合もあります。
その点、Tokyo Prideでは、パレードを歩く人、家族や友人と参加する人、企業ブースで活動する社員など、多様な当事者の姿を見ることができます。
それによって、「特別な誰か」ではなく、同じ社会の中で働き、生活している人たちなのだという実感につながります。
これは、人事担当者にとっても重要な意味があります。
研修資料や制度説明だけでは伝わりにくいことも、実際の空気感に触れることで理解が深まるからです。

また、Tokyo PrideにはALLY(アライ)として参加する人も多くいます。
「自分には関係ない」と思っていた社員が、イベントをきっかけに関心を持ったり、「職場の誰かが困っているかもしれない」と考えるようになったりするケースもあります。

つまり、Tokyo Prideは単なるイベントではなく、「当事者を可視化し、その結果として理解者を増やしていく場」でもあるのです。

 

現在のTokyo Prideは、多様な立場の人が参加する社会的イベントになっています。
そこには、人権運動としての側面だけではなく、「社会に関心を広げ、理解者を増やしていく場」という役割もあります。
そして、その広がりに企業が大きく関わっています。
企業が参加することで、これまでLGBTに接点のなかった人たちが知り、考え、理解を深めるきっかけが生まれます。

人事担当者にとってTokyo Prideは、単なるイベント参加ではなく、「自社がどのような職場でありたいのか」を見つめ直す機会でもあります。
華やかなレインボーカラーの背景には、長い歴史や葛藤があります。
その意味を理解したうえで、Tokyo Prideのイベント当日やPRIDE月間だけでなく、継続的に発信し、行動していくことが求められているのかもしれません。