6月はプライド月間ということで、さまざまなイベントが日本中で開催されました。
企業においても、研修やeラーニングの実施、TokyoPrideへの出展、パレード参加、コミュニティなど活発に活動が行われています。
そんなプライド月間について、LGBT当事者の目線でどのように感じているかを、Iさんにお聞きしました。
私の勤務先では、5年位前から、毎年6月になるとプライド月間に合わせた取り組みが行われています。
社内ポータルにはレインボーカラーのバナーが掲示され、経営層からも多様性を尊重するメッセージが発信されます。
社内セミナーやイベントも開催され、社外から見れば「LGBTに積極的な企業」に映っていたと思います。
ただ、私はその様子をどこか他人事のような気持ちで眺めていました。私はLGBT当事者ですが、職場ではカミングアウトしていません。
入社以来、自分のプライベートについて話すときは、いつも少し言葉を選んでいました。
週末の出来事を聞かれても、「パートナーと出かけた」とは言わず、「友人と出かけた」とごまかすこともありました。そんな中で迎えた昨年のプライド月間で、会社からは「誰もが自分らしく働ける職場を目指します」というメッセージが発信されました。
画面いっぱいに広がるレインボーカラーを見ながら、「本当にそうだったらいいな」と思う一方で、「でも、私はまだ話せない」という気持ちにもなりました。そう思ったのは、少し前に社内で当事者をテーマにしたオンラインセミナーが開催されたときの話です。
セミナー自体の内容はとてもよく、参加者からも前向きな感想が多く寄せられ「理解が深まった」という声があったそうです。
しかし翌週、職場では同性婚に関するニュースを話題にしながら、誰かが「自分の周りにはそういう人はいないな」と何気なく話していました。悪意のある発言ではありませんでした。
でも私は心の中で、「ここにいるけれど、見えていないだけなんだよ」とつぶやいていました。プライド月間のイベントが終わると、多様性に関する話題も自然と消えていきます。
レインボーバナーも外され、日常が戻ってきます。そのたびに私は少し取り残されたような気持ちになります。
もちろん、会社が何もしていなかったわけではありません。むしろ、以前と比べれば大きく前進していたと思います。
それでも当時の私にとって大切だったのは、6月の華やかなイベントではなく、365日の職場環境でした。同性パートナーの話を自然にできる雰囲気があるか。
制度について安心して相談できる窓口があるか。
管理職が適切な知識を持っているか。
困ったときに味方になってくれる人がいるか。
私が欲しいのは、特別な配慮というより、安心して働ける日常でした。今年になって、社内で当事者やアライが参加するコミュニティが立ち上がりました。
初めて参加したとき、その場でカミングアウトをした社員もいました。
コミュニティでの対話を通じて、会社も完璧ではないものの、本気で改善しようとしていることが伝わってきました。
今では、プライド月間は重要な機会だと思っています。
ただし、それはゴールではなくスタート地点だと思っています。
プライド月間の施策が成功しているかどうかは、イベントや研修の参加人数や発信量での判断も大切ですが、どのように日常が変化したかということも大切です。
企業としては「何を発信するか」「どんなイベント(研修)を実施するか」に意識が向きがちですが、当事者が見ているのは「発信と日常に矛盾がないか」です。
プライド月間に掲げたメッセージが残りの11か月を通じて、管理職の言動や制度運用、日々の職場の会話の中で実感できることで、当事者の安心感(心理的安全性)につながっていきます。
Iさんは、「プライド月間以外にも、取り組みや活動が浸透していくことを期待しています!」とおっしゃっていました。




