働きやすい職場というのは誰もが望むものですが、では具体的にどんな職場が働きやすいかというと人それぞれ異なる部分も大きいので、働きやすい職場づくりというのは難しさがあります。特にLGBTに関しては、なかなか意見が見えにくいので、どうしたらいいかわからないという企業の人事ダイバーシティー担当者の声も多く耳にします。

今回は、ゲイのTさんに働きやすい職場について話をお聞きしました。

私は、今、30歳で転職活動中です。前職は、大学卒業後に新卒で入社して7年間働きました。前職の仕事内容はオフィス用品の営業職でした。セクシュアリティに関してはゲイです。女性とも一度だけお付き合いしたこともありますが、やはり違うと感じており、今は2年付き合っている同性のパートナーがいます。

カミングアウトは、大学生のときにかなり仲の良い友人に1人だけしたことがあります。その友人は付き合いも長かったので、言うまではドキドキはしましたが多分、わかってくれると思っていたし、実際に、それほど驚きもなく受け止めてくれました。ただそれ以外は、家族も含めて誰にもカミングアウトはしていませんでした。やはり、カミングアウトをして、関係がおかしくなるのとか心配ですね。

前職では、入社してすぐに営業部に配属になったのですが、そこで実は、先輩にバレました。働き始めて3か月くらい経った時ですが、営業でお客様に訪問した帰りに同行していた先輩に、「ちょっとお茶していこう」と声をかけられました。なんだろうと思ってついていくと、「Tって、もしかして男に興味があるタイプ?」と聞かれました。突然だったので驚いたのですが、あまりにまっすぐ聞かれたので、あまり考えもせず、つい正直に答えてしましました。先輩は仲のよい友人にゲイがいて、私のこともみていてなんとなくそうかな、と感じたそうです。

先輩はそのまま受け入れてくれて、もちろん、誰にもしゃべらず、なんとなくいろいろフォローをしてくれました。飲み会の席とかで恋愛話でちょっと困ったときなども、うまく話をそらしてくれたり、私が当時つきあっていた別のパートナーとの恋愛話も聞いてくれたりしていました。入社前には、職場でカミングアウトをするつもりは全然なかったのですが、こうして素の自分を出せる人が身近にいるというのは、やっぱり楽だし居心地の良さを感じていました。

ただその先輩が、2年前に退職をして、そこからは完全に社内では誰にも言っていない状況になり、誰にも言えないというのがだんだん苦しくなり、今回、転職をすることにしました。転職にあたっては、仕事内容や給与なども大事なのですが、職場で最初からカミングアウトをしようと思っています。そのために、面接でも必ずカミングアウトをして、どう思うかを聞くようにしています。面接の場では、だいたい最後に、何か質問はありませんか?と聞かれるので、そこで自分のセクシュアリティを伝えて、カミングアウトの希望も伝えています。

今まで、10社くらい面接で話をしましたが、ゲイであることを直接否定されたことはないです。ただ「社内にはそういう人はいないから、働きにくいかも」「職場ではカミングアウトをしないほうがいいと思う」というような、婉曲的に否定されたケースは多かったです。

まだ自分が納得できる企業と巡り合えていないので、自分の転職の軸は大切にして、引き続き転職活動をしていこうと思います。

Tさんにとって働きやすい職場とは、自分のことをそのまま話せる(カミングアウトをしても大丈夫)な職場だそうです。同じ職場で誰か一人でも知っていて相談できるというのも大きな支えになっていたのですが、できればもっと多くの人に嘘のない自分を出して、一緒に仲間として働きたいと話してくれました。

性的指向は、仕事をするうえでは関係ないという考えもありますが、職場は仕事をするだけでなく、人間関係を築く場でもあり、人とのつながりの中にやりがいや喜びを感じることもあるので、自分自身を出せるということは、とても大切な要素の一つと考える人も多いですね。