2022年11月から東京都においてパートナーシップ制度がスタートしました。
自治体によるパートナーシップ制度は2015年の渋谷区・世田谷区を皮切りに、年々増加の一途をたどってきており、ついに東京都という最大の自治体での導入に至りました。
今回は、東京都のパートナーシップ制度の導入が、社会に、そして企業のLGBT取り組みにもたらすであろう影響について考えてみたいと思います。

まず、パートナーシップ制度や同性婚の現状についての確認です。

■自治体のパートナーシップ制度

2022年11月現在で、全国の自治体のうち200以上の自治体でパートナーシップ制度が導入されています。
各自治体で、パートナーシップ制度の要件や効果には違いがありますが、いずれにしても法的な婚姻が認められない(同性)パートナーをサポートする効果があります。

東京都のパートナーシップ制度では、全国初の在住者以外の在勤/在学者も対象としています。そのため対象となる人口を明確に算出するのは難しいのですが、それでも東京都の導入により、全国の対象人口は7000~8000万人近くになると思われます。日本の人口の約2/3が対象になる計算です。

■国の状況
国においては、法律上の婚姻は事実上、異性間に限られています。それに関して、同性婚を認めてほしいという裁判が全国(札幌、東京、名古屋、大阪、福岡)で争われています。

これまでに札幌地裁では、同性婚を認めていない現状は憲法14条(法の下の平等)に違反するという判決がでています。一方で大阪地裁では、憲法14条には違反しないという判断がでています。

まだ他の地裁や今後高裁、最高裁などの判断がどうなるかはわかりませんが、合憲という判断を示した大阪地裁においても、今後の社会状況の変化によっては、現状が違憲になる可能性があるということが付言されています。

■企業の状況
企業でもパートナーシップ制度の導入が進んでいます。2022年のPRIDE指標においては、400社ほどの企業がPRIDE指標に申請をし、受賞をしています。このほとんどの企業で異性婚と同等の福利厚生が同性パートナーにおいても受けられるという制度が導入されています。

東証上場企業数(プライム&スタンダード)は3200社あります。PRIDE受賞の400社の中には中小企業も含まれますが、一方でグループ連名で受賞している企業もあるので、概算で東証上場企業の10%以上が導入していると考えられます。

では、このような現状の中で、今回の東京都のパートナーシップ制度の導入がもたらす影響とはどんなものが考えられるでしょうか?

一番、大きな影響は「当たり前」が変わることだと考えています。
自治体のパートナーシップ制度の対象人口が2/3になるということは、パートナーシップ制度導入自治体が、マジョリティとなり、制度があるのが「当たり前」になります。
これにより、当事者にとっては、婚姻という形ではないにせよ、パートナーシップは公的に認められるものなのだ!という意識に変化していきます。
またLGBT非当事者であれば、この変化を知らない人も多くいますが、それでも徐々にであっても確実に人々の意識は変化していきます。
しかも、この自治体のパートナーシップ制度の導入は急速に進んでいるので、2,3年のうちには対象人口は全国の70%、80%と増えていくことが予想されます。
パートナーシップ制度の導入だけがすべてではありませんが、世の中のLGBTへの理解度合いを測る代表的な指標とも考えられます。

この世の中の理解度が深まることで、前述の裁判所の判断にも影響を与えることが予想されます。

そして、社会の理解が深まるということは、企業で働く社員一人ひとりの理解が深まる、意識が変わることにつながります。
企業に対してパートナーシップ制度の導入を希望する声も大きくなることが予想されます。さまざまな事情で、現時点では導入していない企業も多くありますが、今後、数年のうちには企業でも導入するのが「当たり前」という価値観に変わってくる可能性もあります。

今回の東京都のパートナーシップ制度導入は、「当たり前」が変化する大きなきっかけの一つとなると考えています。