『ビジネスパーソンが知っておきたい LGBTQ+の基礎知識』
電通ダイバーシティ・ラボがLGBTQ+(セクシュアルマイノリティ)について、ビジネスパーソン向けに取り纏めた一冊です。
ビジネスパーソンが知っておくべき基礎知識を幅広く網羅しています。
同時に電通ダイバーシティ・ラボが実施した調査結果の紹介もあります。調査結果に関しては電通ダイバーシティ・ラボならではのコンテンツでもあり、読みごたえがあります。
※電通LGBTQ+調査に関してはこちらの記事がおすすめ
年齢の若い層は、年齢の高い層に比べて、LGBTへの理解があると言われています。そのような当たり前という意識のある新入社員だからこそ、本書を活用した研修や推薦図書としておススメすることで、改めて知識の整理に役立てることができます。
データも豊富で、用語集もついているので、ちょっとした調べものにも便利に使うことができるおススメの一冊です。
書籍概要
【目次】
第0章 企業としてLGBTQ+領域に取り組む意義とは?
第1章 聞くに聞けない!LGBTQ+基礎知識
第2章 LGBTQ+を取り巻く社会の動きと世論
第3章 当事者が抱える課題と各セクターの取り組み
第4章 LGBTQ+の人が働きやすい環境づくり
第5章 LGBTQ+とビジネス領域
印象的なコンテンツ
『聞くに聞けない!LGBTQ+基礎知識』(P15)
第1章では、セクシュアリティに関する基礎的な知識が学べます。性自認、出生性、性的指向、性表現という4つの性の説明、性同一性障害、SOGIの説明など一般的な説明ですが、コンパクトに絞り込まれているのでわかりやすいと思います。
『あなたとわたしは同じ人間です。朝起きたら歯を磨いて、トーストにするかご飯にするかを悩んだり・・・』(P69)
当事者のインタビューの中で、本書の読者向けに一言を依頼されての発言です。LGBTの当事者も非当事者もほとんどの部分では変わることはありません。特別扱いをしてほしくないという当事者も多くいます。
またこのインタビューの中で、同じ方が『結婚と同等の扱いが受けられるようになったとしても、本当は心から祝福されたくても、その契りを公にするにはカミングアウトを伴うという状況があります』ということも話されています。
制度と文化の両面が変わらないと、『あなたと同じになれない』という表現をされています。
『日本で一番多いのは、「知識ある他人事層」』(P80)
電通ダイバーシティ・ラボの調査結果によると、ストレート層をいくつかに分類した場合に、一番多いのがこの「知識ある他人事層」となるそうです。
※知識ある他人事層・・・知識はあるが、当事者が身近にいないなど、いまの社会に対する課題意識をもつきっかけがない。現状維持派。
まずは身近なトピックとして捉えられるようなきっかけづくりが重要という問題提起をしています。
『カミングアウトをされたときに心がけたいこと』(P107)
ハラスメントやアウティングの危険について説明した後に、このカミングアウトをされた場合の対応について説明しています。
『あなたが受け入れていることを相手に伝えましょう』『特別扱いをせず、いままでどおりの関係を保ちましょう』というような7つの“心がけ”が書かれています。基本的なことですが、つい忘れがちなことまで書かれているので、カミングアウトを受けた場合の心構えとして参考になるかと思います。
感じたこと
本書は、『ビジネスパーソンが知っておきたい』というサブタイトルが付いていますが、職場だけでなく、社会や学校現場でのことまで書かれています。
ビジネスパーソンの一般教養としての位置づけに近いからこそ、これからさまざまなことを学んでいく新入社員向け研修の資料のひとつとしておススメの一冊です。