契約企業の概要

日用品メーカーの大手企業A社。LGBTの取り組みは2年前から始めており、全社員向け(希望者)の研修と人事部内の研修を実施し、同時に社外の相談窓口を設置しています。福利厚生制度の同性パートナーへの適用などの人事制度改革は現在、検討中という段階です。

相談内容

今回のご相談はMTFトランスジェンダー(戸籍男性、性自認女性)のTさん(29歳)です。

Tさんの相談は『アウティングされないようにするために、トランスジェンダーであることを人事部にカミングアウトをしたほうがいいでしょうか?』ということでした。

Tさんに事情をお伺いしたところ、1年ほど前に現在の職場に中途で入社をして、現在は商品企画部署で働いています。
セクシュアリティとしては、戸籍の性別変更はしていないものの、名前は中性的な名前に変更済みであり、また見た目も女性らしい格好で働いています。

転職活動の際に、履歴書は性別欄がないものを使用して応募をし、面接では女性のスーツを着て受けたそうです。面接は現場の方(現在の上長を含む)のみで3回実施され、そこではセクシュアリティに関してはカミングアウトもせず、また何も聞かれることがなく、そのまま内定となりました。
ただ入社時の提出書類には戸籍の性別を記入する必要があったので、人事部には戸籍男性という書類を提出したとのことです。

そのまま入社して現場に配属になり、現在の職場では特にカミングアウトをしていないので、周りの同僚も上司も女性だと思っているそうです。一方で、戸籍男性ということを伝えてある人事部の人とはまだ直接ちゃんと話したことはなく、もしかするとTさんのセクシュアリティについて全くわかっていないかもしれないとのことです。

つまり、人事部はTさんを男性として把握しており、職場は女性として認識しているかもしれないという状況だそうです。

この状況は、普段の仕事の場では何も問題がなく、それ自体はとても働きやすくて良いのですが、何かあったときに人事部から上司に、戸籍は男性である、という連絡がいき結果的にアウティングされてしまう不安があるとのことです。
一方で、人事部にカミングアウトをしたら、今の居心地のよい働き方ができなくなる不安もあるとのことでした。

弊社の外部相談窓口対応

Tさんのお話を詳しくお聞きした上で、希望や不安な点を整理いたしました。

Tさんとしては、面接から入社までの間に人事担当者としっかり話をする機会がなかったので、LGBTやトランスジェンダーの働き方について、この企業や人事担当者がどのような考えをもっているか分からないのが一番の不安だということがわかりました。

弊社から、SOGIやトランスジェンダーの働き方についてのこの企業の考え方をお話し、情報共有(カミングアウト)をしないことによる思わぬアウティングのリスクも改めてご説明いたしました。

Tさんに安心・納得をしていただき、結局、弊社から人事部門に情報共有をして、Tさんと人事部門での面談の機会を設けて、お互いの状況の共有をいたしました。

Tさんの現在の働き方自体は、Tさん自身も周りも全く困っていないとのことなので、そのまま継続することになりました。
また『変に気を遣われて、働きにくくなるのは避けたい』というTさんの想いが強かったので、直属の上司への情報共有に関しては当面は見合わせ、人事部内で性別情報が必要になるケースを洗い出して、職場に共有する際に個別に注意をしていくという形になりました。

Tさんの場合は入社して6か月以上経ちますが、その間、アウティングの不安を抱えながら働いていたそうです。性別欄のない履歴書は良い点もたくさんありますが、一方でこのような事態が生じる場合もあります。

性別欄のない履歴書やエントリーシートを導入する場合には、単に性別欄を削除するだけにとどまらず、受け入れの体制も同時につくっていくことが大切になります。

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