LGBTの就活生にとって、就職活動はいろんな形で気を使うことが多いです。
面接を無事に通過して内定をもらえたことは、一つの安心材料ですが、一方で、実際に入社を具体的にイメージするこの段階で、さまざまな不安を抱くことも多いです。
今回は、4人の就活生に、内定式を前に、今の正直な気持ちをお聞きしました。

Aさん:トランス女性
私は選考の途中で、自分がトランスジェンダーであることを伝えました。
面接官の方からは、服装や施設の使い方など「入社後もできる限り対応します」と言ってもらい、その言葉にはとても安心しました。
ただ、実際に一緒に働く人たちは、まだ一人も知りません。内定式では、周りはどう思っているのか、どんな服装で参加すればよいのか、周りからどのように呼ばれるのかなど、細かいことが急に気になってきました。
人事の方が理解してくれていても、現場の人も同じように受け止めてくれるとは限りません。「大丈夫」と言ってもらったからこそ、実際の職場がどうなのかを自分の目で確かめたいと思っています。

Bさん:ゲイ
私は第一志望だった会社から内定をもらい、素直にうれしかったです。
企業選びのときは、LGBTへの取り組みをそれほど調べていませんでした。
仕事内容や給与、自分が成長できるのかなどが気になっていましたし、「自分がゲイであることを会社に伝える必要もない」と思っていたからです。
今も、特にカミングアウトするつもりはありません。
ただ、内定式を前にして、同期が「彼女いるの?」と普通に話していたり、会社の人が「結婚したら家族を連れてきて」と話したりするのを見ると、自分がどんな雰囲気の会社に入るのかは少し気になります。
何か特別な対応をしてほしいわけではありません。ただ、無理に自分を隠さなくても済む職場なのかは知っておきたいです。

Cさん:ノンバイナリー
選考の段階では、自分がノンバイナリーであることを伝えませんでした。
採用サイトには「服装自由」と書かれていたので、入社後も自分らしい服装で働けるのかなと、少し安心していました。
ところが、先日参加した職場見学で実際の社員の方を見ると、男性はほとんどスーツ、女性もきちんとした服装の方が多く、「服装自由」とはいっても、実際には周囲に合わせることが求められるのではないかと感じました。
仕事内容には魅力を感じていますし、できれば入社したいと思っています。でも、自分がスーツを着ることに違和感があることを考えると、毎日周囲に合わせ続けるのは難しいかもしれません。人事に相談することも考えましたが、入社前から面倒な人だと思われるのも怖く、最近は内定を辞退したほうがよいのかもと考えるようになってます。

Dさん:レズビアン
企業の採用ページに「多様性を尊重する」「LGBTQ+に配慮する」「同性パートナシップ制度あり」と書いてあったので、少し安心して応募しました。
内定をもらった今は、入社することを楽しみにしています。ただ、正直なところ、その言葉が実際の職場でどんな形になるのかは分かりません。
内定式の案内にも「同期との懇親会」がありますが、そこで恋愛や結婚の話になったら、自分はどう答えるのだろうと思っています。
また実際に、パートナーができたときに、周りの雰囲気も含めてこの福利厚生制度が使えるのかなど、少し気になります。
会社の制度が整っていることと、安心して制度が利用できることは少し違うのかなという気がします。
人事の方から制度の説明をしてもらうだけでなく、「困ったときはこう相談できます」と具体的に伝えてもらえたら、入社前の不安はかなり減ると思います。

このような声を見ても分かるように、内定式を前にした当事者の気持ちは、「会社に配慮してほしい」という一言ではくくれません。
すでに相談している人もいれば、カミングアウトするつもりのない人、相談したいけれどタイミングを迷っている人もいます。

人事として大切なのは、すべての当事者を見つけ出して対応することではなく、必要なときに安心して相談できる環境をあらかじめ用意しておくことです。

内定式は、会社がLGBTへの姿勢を伝える最初の機会にもなります。
制度や相談窓口の案内をすることはもちろん、それだけでなく、「困ったことがあれば相談してよい」というメッセージを届けることが、入社前の不安を少し軽くする一歩になるのではないでしょうか。