日本では同性婚が法的に認められていないので、セクシャルマイノリティの中には同性婚の法制化を求める人もたくさんいます。同性婚の法制化を求める動きは近年、より大きくなっており2019年2月には同性であっても婚姻を認めるように全国各地の地方裁判所に複数の同性カップルから一斉に提訴があり、また2019年6月には国会で同性婚を合法化する法案が初めて提出されています。
一方で、同性婚がすぐに認められる可能性は低く、現実を見据えたときにどうするのがいいか悩むセクシャルマイノリティも多くいるのも事実です。
今回は、レズビアンですが男性と正式に結婚をしているIさんの声をご紹介します。
私は今、派遣で経理のアシスタントとして働いています。36歳です。高校時代には男性と付き合ったこともあるのですが、付き合ってみるとやっぱり何か違うという感じがして、結局、好きになるのは女性ですね。
自分のレズビアンというセクシュアリティについては、親には特にはカミングアウトをしていなかったのですが、母親はなんとなく感づいていたのか、専門学校に通っているときにずばりと聞かれたことがあります。最初に聞かれたときは焦ってしまい、その場は否定してごまかしたのですが、そのあと、改めて聞かれたのでそこで初めてカミングアウトをしました。
ただ母親には全然、理解をしてもらえず、「いい人と出会ったら治るから」と言われ続けていました。
仕事のほうは会計の専門学校を卒業して、簿記2級の資格を取得してそのまま商社の経理部門で入社しました。仕事自体は、部内のメンバーも少なく仕事の幅は広かったので覚えることも多く、また間違えちゃいけないというプレッシャーなどもありましたが、それでもやりがいもありました。ただ30歳を前にして、年下の従姉妹が結婚をしたのもあって母親からの「仕事もいいけど、早く結婚しなさい!」というプレッシャーがかなり強くなりました。レズビアンだから結婚しない、というのを全く分かってもらえない寂しさはありましたが、一方で親の心配や期待も伝わっては来ていたので、安心してもらうために、あるセクシュアルマイノリティのサークルで知り合ったゲイの人(Aさん)と偽装結婚をすることにしました。
Aさんには、もちろん私がレズビアンとかの事情はちゃんと説明し、Aさん自身も似たような状況で結婚という形を必要としていました。結婚自体はちゃんとお互いの両親のところにあいさつに行き、結婚式もしました。
一応、新居は千葉に構えたのですが、そこにはAさんが住むことにして、私はそこには一度も暮らすことはなく、東京で一人暮らしをしていました。
結婚を機にいったん、最初の職場を退職してその後は派遣社員としていろんな企業の経理や総務の仕事をしています。
実は、今は2年前に知り合ったパートナーと二人で暮らしています。パートナーは私が結婚していることは知っていて構わないと言ってくれています。
ただ私としては、正直このままでいいのか、とても悩んでいます。彼女のことを考えると彼女と結婚はできなくても、少なくともAさんとは離婚をしてあげたいと思う一方で、Aさんにも都合はあるだろうし、もちろん両親にまた心配をかけるのも気になります。
今の時点では、Aさんとの離婚はともかく、彼女を養っていけるように、もう一度、正社員で働いてしっかり稼いでいきたいと思っています。
Iさんに限らず、LGBT当事者の中にはこのような形で結婚という選択肢を選ぶケースがあります。ただこの状態を継続するのはやはり難しくうまくいかないことも多々あります。ちなみに、Iさんは現在の職場で親しくなった同僚にレズビアンであることをカミングアウトしたそうなのですが、男性と結婚しているという点で、いまいち理解してもらえていない気がするとのことです。
自治体のパートナーシップ制度の広がりに伴い、同性婚への機運も少しずつ高まっては来ています。同性婚が認められればすべて解決するというわけではありませんが、それにより生き方の自由度があがる人は多くいます。Iさんも同性婚が認められるなら、今のパートナーと結婚をする!と言っていました。